777.葉状水晶 Quartz (ロシア産) |
今見えている面が何かで抑えられた状況で成長したかのような形をした水晶群です。
たくさん水晶がありますが、真横からみると
板でも乗っていたみたく先端部の高さが揃っています。
スライスして少しズラせてくっつけ直したみたいな形です。
右端の結晶のテーブル面にはケガキ線模様が見えます。
ノコギリで引いたかのような切れ目が平行にいくつも入っています。
この箇所に何らかの鉱物(方解石や雲母など)があって、
水晶の成長を阻んでいたと考えられています。葉状といえば葉状に見えます。
この標本では干渉した鉱物は溶失していますが、残っている標本も出回ってます。
水晶の柱面を切り落としたかのように、成長阻止面が
左、中、右と3つ、一直線(同一平面)に並んでいるのが分かりますか?
No.776で書いたように、ダルネゴルスクは水晶(クバルツ)の名産地として知られ、さまざまな色と形の水晶が出る。なかで変わりモノというと、葉状水晶と愛称されるタイプの標本が挙げられる。
この呼称は地元で行われているそうだが、日本人の我々には、むしろマナ板の上でキュウリを輪切りにして、少し斜めに寝かせて切断面を覗かせた形の水晶といった方がイメージしやすいと思う。
輪切りにしてまた繋ぎ直したけれど繋ぎ目が少しズレてしまったような、あるいはノコ挽きして繋ぎ直したので元より少し寸が足らなくなったような、そんな感じの水晶である。
先端(尖頭部)がついた結晶もあるが、スパっと切られて、先の部分は飛んでいってしまったような、頭部がテーブル面になっている結晶もある。そんなテーブル面にはときどきケガキ針で描いたようなダイヤグラム模様が見えることもある。
このタイプの水晶は、どちらかというとパワーストーン畑の人たちに人気で、グロース・インターフェアレンス(Growth
interference
:成長阻害(干渉))と呼ばれて、逆境にも関わらず結晶となったパワーが高く評価されているらしい。
私の記憶では、このタイプの水晶が出回り始めた頃、特徴的な輪切り面(ないしシフト面)は断層になぞらえて説明されていた。水晶が成長している間に地質変動が起こって成長面がズレていったとか、せん断応力がかかって小刻みに分断されシフトした切断面が再度接着した、とかいった類の成因が構想されていたのである。そのため、セルフ・ヒールド(Self
healed:自己治癒)のパワーを帯びていると言われていた。
しかし現在は、地質変動ではなく、何らかの鉱物の干渉による成長阻害の痕痕とみるのが一般的で、従ってパワーの能書きも変わった。ついでにいうと、上述のテーブル面の模様は、レコードキーパー
(record keeper) 的であるとも言われている。
そういうことを言いたくなる気持ちは私も分からないわけではない。しかしこのタイプの水晶の場合、あなたは石からパワーをもらうのではなくて、むしろ石に対して愛とヒーリングの雰囲気をシェアしてあげるべきではないだろうか。ダルネゴルスクの露天掘りホウ素鉱山から掘り出された、かの創傷水晶に。
cf. めのう22 −石礫に断層が入って、ずれを生じたまま再接合した「食い違い石」というものがある。この水晶が市場に出始めた当初はそういう成因が想定された。
cf.2 堀博士の「水晶の本」(2010)は、(日本のマニアの間では)「地震水晶」というニックネームが通用しているが、地震との関係はわからない、と書いている。ズレは結晶面の方向に起こっているとのこと。
cf3. No.432
条線の観察できるラブラドライト(グリーンランド産)。せん断応力が働いて結晶面に断続的な滑りが生じたことで起こった事象、と説明されている。
cf4.
フレンツェ産の「崩壊した大理石」(パエジナ・ストーン)
No.177