177.パエジナストーン Paesina Stone   (イタリア産)

 

 

いつかある日、山で死んだら…とか、つい歌ってみたくなるね

パエジナストーン−イタリア、フィレンツェ郊外産

 

Pietra Paesina (Paesina Stone) は、今から3000万年、あるいは5000万年前、トスカナの丘を舞台に、炎と氷、地震と水とによって形作られた(あっさりいえば、造山運動)。

Paesina はイタリア語で「風景」の意味。この崩壊した大理石(あるいは石灰岩)は、自然が描いた偉大な風景画である。不規則な断層線と酸化鉄の凝集度合いによって表現された朝焼けの空と山。その麓には、二酸化マンガンが浸透して出来た森が横たわっている。

下の標本も同様にして形成された Picture Stone。こちらは、立体に切り出された愉快なオブジェ。私は最初、寄木細工かと思った。今でも見間違う。

参考:バイヤー広告の受け売りだが、パエジナストーンが取り上げられた最初の文献は、アタナシウス・キルケン(キルヒャー)(1602-1680)の著書で、「1664年、ローマのサン・セバスティアノ寺院の祭壇に用いられた」とある。彫刻家ミケランジェロは、この石に惹かれ、沢山のコレクションを集めた。それらは、現在フレンツェのブオナロティ博物館で見ることができる。フィレンツェと言えば、大富豪メディチ家のコジモU世は、石の加工細工学校を設立して職人の育成を行った。この学校を出た職人たちがパエジナストーンを広くヨーロッパに普及させることとなり、王侯貴族社会では非常にもてはやされ高価に取引されたという。

参考2:フィレンツェ産のいわゆる「崩壊した大理石」(廃墟大理石)についてゲーテは衝撃による凝固が原因と考えて、次のように書いている。「おそらくそれは滴り落ちてできた岩脈の一種で、一方でそれが縞のように形成されようとしていたときに、あるショックで繊細な条痕が垂直の小さな割れ目で寸断され、水平な線条を著しくずらしてしまったのである。その結果、ある線条は高く持ち上げられ、他のものは下げられてしまい、それにより隙間のある壁のような形態が生じてきたのである。(「全体と個から見た岩石形成 1824 ゲーテ 木村直司訳)

参考3:20世紀には、バルトルシャイテスの「アベラシオン −形態の伝説をめぐる四つのエッセー」(1957年)に収められた「絵のある石」や、ロジェ・カイヨワの「石が書く」(1970年)が、その趣味への傾倒者の系譜を示している。石の模様への幻視・錯視は、自らの心理内容の外部への無意識的な投影(ロールシャッハ・テストに似た)とも考えられる。日本では山田英春氏の「不思議で美しい石の図鑑」(2012年)がこの系譜に連なるものだろう。

cf. ヨアネウム6  No.178(絵の石)     No.229(オーシャン・ジャスパー)  No.381     No.382    No.383(セプタリアン)    No.384   

 

箱根細工?

パキスタン産

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