847.トライトーム石-(Ce) Tritomite-(Ce) (スウェーデン産)

 

 

 

tritomite

トライトーム石-(Ce) (暗赤褐色) −スウェーデン、nr.Granna、Lakarp産

 

 

トライトーム石はランゲスンツのローブン島が原産の種のひとつで、1849年、P.C.ウェイビーが発見し、翌年に報告された。名の由来はギリシャ語のトリ(三角の)+トモス(断面)で、母岩を割って現れる本鉱の結晶断面がしばしば三面で囲まれていることによる(疑似四面体の形状で、うまく割ると三角形の断面が現れる)。
当初はセリウムとランタンの珪酸塩(シリケート)とされ、後にイングストロムがホウ素を含むボロシリケートであることを示した(1877年)。ブレガーは本鉱が六方晶系であることを示した(1890年)。メタミクト化した非晶質の鉱物で、空気中または水中で 600-1000℃に加熱した試料は、燐灰石及び酸化セリウムのX線粉末回折パターンを共に示すという。燐灰石スーパーグループのブリト石(ブリソ石)グループに分類されている。組成 (Ce,La,Ca,Y,Th)5(Si,B)3(O,OH,F)13(Dana 8th)

19世紀後半にオスロ・リフトに連なるランゲスンツ・ラルビク地方の鉱物誌を集成したブレガーが、1887年に報告した黒セル石 Melanocerite はセリウムを成分とする黒色の鉱物である(キーオ島産。後の Melanocerite-(Ce))。組成は Dana 8th に (Ce,Th, Ca)5(Si,B)3O12・nH2O とある。また 1890年にはセリウムを成分とする胡桃色の新鉱物を報告し、カリオ・セル石 Caryocerite と命名した(アリョ・スキャーレン島産)。組成 (Ce,Ca)5(SiO4,BO4)3(OH,O)。トライトーム石とこの2種とは後に類似性を巡って多くの議論が交わされた。
この地方の鉱物は19世紀半ばまでに何人かの鉱物学者たちが盛んに研究して新種を多数記載し、その後1880年代になって再び新種ラッシュが起こったが、後に同一物として整理され、または混合物として再定義された種がいくつかある。この間の四半世紀で知識の断絶があったのかもしれない。今日、カリオ・セル石はトリウムを多く含む黒セル石の亜種とされており、黒セル石もまたトライトーム石と同一との見解が有力視されている。
また 1966年にニュージャージー州から報告されたトライトーム石のイットリウム優越種 はかつて Spencite と呼ばれたが、今日 Tritomite-(Y)と改められている。

補記:トライトーム石と似た命名の鉱物にトライゴン石(トリゴン石)がある。スウェーデンのロングバン地方で発見され、1920年に報告された種で、こちらは自形結晶が三角形の輪郭を示す厚板状であることから。トライゴン石に似た命名の鉱物にお馴染みペンタゴン石がある。トライメライト(トリメライト Trimerite)という鉱物は、3連環状双晶して3つのセクションに分かれて見えることからその名を得た。

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