1004.水晶 鳥形三連双晶2 Quartz Multiple Japan law twins (日本産) |
ガルデット式(日本式)双晶は二つの個体が 84.5度傾軸式に準安定な結晶構造で配置した双晶、と定義すると、扇状に開いた特徴的な二股形状がシンボリックなアイコンとなる。「V字型」、「ハート型」、「軍配型」などバリエーションはあるが、結晶学的に同じ法則で結ばれた紛れもない同胞たちである。
しかしいったん「二つの」という括りを外してしまうと、バリエーションはとめどなく広がり、「これは一体何なのか?」「どのようにして出来たのか?」と言いたい奇妙さを帯びる。翻って考えると、二個体だけの双晶も、実はすでにさまざまな生成要因を内包していて然るべきなのではないかと思わせる。
このページには3ケ以上の個体が日本式双晶関係で結合したとみられる形状の双晶を紹介する。いわゆる「鳥形」ないし「変形鳥形」と呼ばれるもの。
これらはそれ自体が興味深いものだが、さらに成長を続けて互いの空間に侵入しあってゆくと、どのような形状に統合されてゆくのか、あるいは統合されることなく多結晶的な群晶になってゆくのか、想像すると謎は深まってゆく。
複数体の日本式双晶が寄合って肥大するとき、現れる群晶の外形は互いにすべてが「双晶」関係の配置を保持している、とはまず期待できない。結晶構造を共有することなくランダムに交差した群晶のようにしかならない箇所が必ず出てくるはずだ。ある双晶は発達し、ある双晶は消滅する、あるいは別の双晶が誕生する、ということもあるだろう。
低いレベルでは双晶関係を持つ領域を含みながら、全体としては無秩序に放散した形状、ただの群晶が生じるかもしれない。愛好家はそうした標本を見て、日本式双晶として発達した部分だけを日本式双晶と認めるだろう。しかし実は、一群の群晶は成長の初期には(つまり結晶の内核には)無数の日本式双晶領域が、ランダムに散らばって含まれていたのかもしれないのだ。であれば、一本独鈷の単晶にみえる巨大水晶が、実は日本式双晶領域をもっていないとどうしていえるだろうか。
…ということを、三ツ岩岳産の標本は物語るように思う。