1027.水晶 平板湾曲連晶 Quartz Curled tabular growth (インド産) |
No.1026 に、水晶の平板状連晶が、対向する脈壁の間を繋ごうとするように伸び、密集して並んだ集合標本を紹介した。それぞれの連晶の柱軸方向は互いに異なっているが、平板の縁で尾根なす稜線が進展する方向はほぼ一致して、脈壁の間を渡っている。
このページの標本は類似の平板状連晶の集合体だが、成長の過程で平行連晶の両側に脈壁があったのかどうかは分からない。ただシート状の聚形を伴いながら発達した趣きがある。
そして No.1026
と違っているところは、平板状連晶が椎骨のように湾曲していることだ。この形態はどのように生じたのだろうか。
@圧力を受けた地層が飴のように曲がる褶曲現象と同様に、いったん生じた結晶(群)が長い時間をかけて(同じ程度に)曲がったのだろうか。
A各結晶(各連晶)が成長する途中で外力の作用を受け、破断を伴いながら変位して、空隙を生じた部分が迅速に埋められることで形態的な湾曲が生じたのだろうか。
B結晶の成長速度に方位によって遅速を生じる条件があり、その条件が時間的にある種の変化を経たことによって外形が見掛け上湾曲しているのだろうか。
Cあるいはファーデンの成長機構仮説が示すように、結晶の成長に段階があって、き裂が開いてゆく軌跡がカーブを描くとき、ファーデンまたはこれに相当する先行成長領域が湾曲して成長し、その後、外層が(平準的に)成長してゆくと結果的に湾曲した形態になるのだろうか。
…ただ、標本にはファーデンの見える結晶が一つあるのだが(上から5番目の画像)、この結晶は湾曲形態をとっているが、内部のファーデンは直線状である。またファーデンは全長に伸びておらず、右側から中央付近までに限って存在する。ということは少なくともこの結晶は、(ファーデン成長仮説が正しいとすれば)、先行成長段階ではき裂の展開軌跡は湾曲していなかったのだろうし、成長が完了した段階以降に結晶全体が湾曲したわけでもないのであろう。
(むしろファーデンは、成長が停止してずっと後に、環境条件の変化を受けて内部で後発的に生じたと考えることも出来るのではないか。)