1028.水晶(錘面の偏った発達)  Quartz (中国産)

 

 

 

錘面の発達程度に偏りのある扁形水晶
(柱面の位置が柱軸方向の高さでみて揃っていない)
 −中国、雲南省産

扁形の水晶(左)に、
比較的整った(柱面の高さの揃った)水晶が接合している

 

水晶の理想結晶形は両錘六角柱状で、各端の錘面(菱面体面 r)は一点で出合い、各 r面の大きさが揃い、各 z面の大きさも揃い、各柱面の中央高さが柱軸を垂直に切る同一平面上にある(高さ位置が揃った)形である。天然の水晶はしばしばこの理想形から外れていくつかの面が大きく発達していることがある(ということは、その面での層成長が相対的に遅れたということであるが)。cf. No.942

各端の r面が一点で出合わないのはよくあることで、一組の対向する錘面の境界に柱軸に垂直な方向に伸びる稜線が生じてノミ形・タガネ形になったものなら普通に見かける。嵩じると一組の対向する柱面が他の柱面より際立って広い「平板状」になる。これは結晶構造的には等価な六方晶系の三つの a軸のうち一つの方向、直行座標系でみるとX軸の方向に、著しい成長が起こる性向(ないし可能性)が水晶にはあるということだ。 (座標軸の図は No.979を参照)
この種の性向は、ファーデン水晶の形状を導くものとも同類かもしれない。

このページの画像は、この点でノミ・タガネ形や平板状と同類の形状で、単結晶形が X軸方向に長く伸びた類だが、ただ特定の錘面が異常に大きく発達して見えるもの。一見、水晶か? と疑問が湧くが、条線によって六角柱を構成する柱面が特定出来れば、なるほど柱面の中央高さの位置が柱軸方向にシフトした形状なのだと納得がいく。この類は r面と z面との区別が(交互に並んでいるのか)ふつう明らかでない。

この標本は No.1005, 1006, 1010 で紹介した中国、雲南省産(貴州省産)と同様の産状で生じたものと思しいが、上記の偏奇性の発達形状の結晶と、通常の六角柱状の結晶とが接合している。それぞれ別々の結晶核(中心)から成長して、接触したものとみなせるが、すると、一方は理想的な対称形状に、他方は偏った扁平形状に成長した、その動因はなんなのだろうか。

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