73.ハックマン石  Hackmanite   (カナダ産)

 

 

ライラック色のところが、私です。でも、早くつかまえないと隠れてしまいますよ。

さあ、私はどこにいるでしょう?

ハックマン石 −カナダ、オンタリオ、バンクロフト産
(上:紫外線照射後、
中:可視光に暴露後
下:UVSWによる蛍光)

 

方ソーダ石の一種で、グリーンランドのとあるフィヨルドで最初に発見された。かすみ石閃長岩という特殊な岩石層やペグマタイトに生じる。命名はフィンランド人の岩石学者、ビクトル・ハックマンに因む。紫外線をあてると綺麗なあんず色に蛍光する。

この石には風変わりな性質がある。上の2つの写真を比べてみよう。左の写真のライラック色の部分がハックマン石。右は同じ標本を1日おいて撮ったもので、ライラック色が消えている。光にあたると色を失うのだ。
面白いのはここからで、光を遮蔽して数週間暗所に保管しておくと、ライラック色が蘇えってくる。また、紫外線に数分間あててやるだけでも、手っ取り早く色を取り戻す。(太陽)光に当てると、色褪せ、紫外線に当てると、発色する。このプロセスは何回でも繰り返すことができるので、飽きるまでやってみるといい。

左の標本は、3年以上前に紫外線を照てたきり、ずっと蔵ってあったのを出してきたもので、遮光して保管すると、長期間色が変わらないことがわかる。一方、直射日光に当てれば、ものの30分とかからず、右の状態に変わってしまう。いつ見ても不思議である。

因みに、すべてのハックマン石が色変りするわけではないようで、手元にあるロシア、ヒビーヌイ産のかなり濃い赤紫色の標本は、同じように放り出しておいても一向に退色の気配がない(参照)。こうなると、ハックマン石ではなく、ただの赤紫色の方ソーダ石ではないのか、と言いたくなるが、濃い目のものは比較的色が安定しているのだそうだ。

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