246.ツグツープ石 Tugtupite (デンマーク産) |
もう3年半も前になるが、この石について、「白、ピンク、赤などの色をしていますが、暗いところに保管すると色が薄れ、光にあてると色が濃くなる傾向があります。」と書いた(参照)。デーナの新鉱物学(8版)にも載っていることだが、今になって補足の必要を感じている。すべてのツグツープ石がそうなるわけではない、と。
実際、No.56で紹介した標本はこの通りの挙動を示すのだが、上の標本の場合、光にあてると色が薄れ、暗がりに保管していると色が保たれることを繰り返し確認した。ただし紫外線をあてると色は濃くなる。これはむしろ方ソーダ石の亜種、ハックマン石の性質といえよう。ツグツープ石は方ソーダ石の類縁種で、ベリリウムを含むのが特徴だが、その一部がアルミニウムに置き換わることがあり、そうなると成分的にも方ソーダ石に近づく。しかし、優雅な赤色と強烈なクリムゾンレッドの蛍光はツグツープ石そのものであって、ハックマン石とも言えない。
この他にごく色の淡い標本が2個手元にあるが、紫外線をあてても色が濃くならない(蛍光はする)。ひとくちにツグツープ石というが、性質は標本によりけりということだろう。
ついでなので、No.73で触れた紫色のハックマン石も画像を載せておく。こちらは方ソーダ石のラベルで売られていることがあるが、日光で褪色せず蛍光もしないので、正解かもしれない。
補記:発見以来、長く方ソーダ石の亜種として知られていたが、現在はベリリウム珪酸塩としてヘルビン・グループに分類される独立種とされている。(2019.10.8)
cf.No.682