80.シャーレンブレンド Schalenblende (ポーランド産) |
手元の標本ラベルには、白鉄鉱、方鉛鉱、閃亜鉛鉱と併記してある。これらが、層状に入り混じって生成した鉱物なのだ。写真の標本は、切断面を研磨してあり、金属らしい光沢があって、よく光る。縞模様や年輪の様相を帯びて、巧緻を極めた木目金(もくめがね)細工のように見える。自然の造形は、しばしば熟練した工芸師の技に匹敵する。
クリーム色、茶褐色部はほとんど閃亜鉛鉱で(出来たときにはウルツ鉱だったかも)、ドイツやベルギーでは、かつて亜鉛の鉱石としてさかんに採集されていたということだ。シャーレンブレンドはドイツ語で、「響く鉱石」の意味、と楽しい図鑑にあるが、字義通りに訳せば「shelly Blende : 貝殻のようなブレンド(亜鉛鉱石)」で、貝殻の年輪模様やタマネギの皮のように、異なる色の層が球果層状に重なっていることからきているらしい。Brauns の「鉱物界」(1912)にそう記されている。
cf. ひま話 デンバー自然科学博物館