81.方ソーダ石  Sodalite   (カナダ産)

 

 

私の気品が、ひー様のようなのよん。

ソーダライト −カナダ、オンタリオ州バンクロフト産
(方ソーダ石かすみ石閃長岩:一般に灰色部はかすみ石、
白色部は曹達正長石、鱗状自形の黒雲母を含むこともある。)

 

成分がナトリウム・リッチなことから、ソーダライトの名を受けた。普通に見かけるのは青い石で、ラピス・ラズリによく似ている。けれども実際には、灰色、白、青、紫、ピンクなど、様々な色のものが知られている。No.73のハックマン石は、この鉱物の一種で、美しい赤紫色だ。

イギリスのメアリー王太子妃(プリンセス・オブ・ウェールズ)がカナダを訪問していたちょうどその頃、バンクロフトの東方4キロの地で、きれいな青いソーダライトが大量に発見された(※と一般に紹介されるが、実際はその以前から知られていた。⇒追記)。この場所は、プリンセスを記念して姫様採石場と名づけられ、以来商業的に重要な産地となった。ここで採れる石はアロム石(Alomite/ 採石場の所有者 Charles Allom に因む)、あるいはプリンセス・ブルーと称し、アクセサリーや飾り石などに研磨されて、女性の人気を集めている(らしい)。

私は、昔この石を嵌めたネクタイ・バーを愛用していた。男性が使ったって、ちっとも差し支えないのである。

cf. No.364(ボリビア産)  No.365(ロシア産)    No.367(イタリア産)  No.463(ミャンマー産)
No.464 (アフガニスタン産)
  No.606(USA産、RSA産)

 

追記:バンクロフト産のソーダライトは1世紀以上の歴史を持つ。1893年のシカゴ万博でオンタリオ地方館に原石や研磨サンプルが展示されて以来、世界的に知られるようになったという。 1901年はイギリスのビクトリア女王が崩御した年だが、王太子・王太子妃となったジョージ・メアリー夫妻(後のジョージ5世王とメアリー王妃)がカナダを訪問してソーダライトの一片を贈られた記念の年でもあった。
メアリー(・オブ・テック: 1867-1953)という人は、後に王家が所蔵する宝石類のカタログを作らせたり、貴族の家を訪問する機会があると家宝をしつこく褒めあげて献上されるまでやめなかったというエピソードの持ち主で、この種のものに強い関心を抱いていたらしい。この時の訪問でも石の深みのある青色を絶賛し続け、その結果、かなりの量のソーダライトが船でイギリスに送られることになった。
1906年に本格的な商業採掘が始まると、およそ130トンの石材がイギリスに出荷されたが、その一部はイギリス王邸だったマールボロ・ハウスの装飾に用いられたという。イギリス王室の関心はソーダライトの宣伝に一役買ったようで、産地はプリンセス・ソーダライト採石場(後に鉱山に改名)の名で知られた。
鉱山には2つの露天掘り坑があり、大きい方は 30x8mの開口を持つ。ソーダライトに伴って、かすみ石(時に自形結晶)、長石類、黒雲母、方解石などが見られる。今も現役で高品質のソーダライトを産しているが、一般の立ち入りは出来なくなっており、石が欲しい方は採石場のお土産店でどうぞ、ということらしい。

ついでに言うと、プリンセンス・メアリーは 1910年にクイーン・メアリーとなった。紅茶商トワイニングのオリジナル・ブランドだったブレンド・ティー「クイーンメリー」(1916年〜2007年)は彼女のお好みだった、ということになっている。 (2020.6.5)
cf. 「思い出のマーニー」とクイーンメリー紅茶

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