111.ダイヤモンド Diamond   (ロシア産)

 

 

ダイヤモンド/青色の母岩はキンバーライト
 −ロシア、サハ共和国、ウダチナヤ産

 

ベルギーの宝石商の子供として育ったマーク・アルテンローという人が、面白いことをいっている。

「ダイヤモンドを顕微鏡で見ると、あんなに硬いものなのに、なかで水のようなものがプチプチプチプチ動いてます。ダイヤモンドは生きています。カッティングするときには、その生きている部分を選んで使うわけです。ちょっと不純物が入ったりして色の変わったものでも、ダイヤモンドの命が綺麗なものは綺麗に輝きます。」(「夜想33 鉱物」)

続けて、ダイヤモンドは生きているので、合わない人が身につけると輝きを失くして寝てしまう、合う人の手に渡ると寝てしまったダイヤも生き返る(プチプチが動き出す)、とか。

この方が、職人たちの言い伝えを語っているのか、自分の経験を語っているのか、寡聞にして知らない。
ただ、私が思うに、そのようなプチプチをダイヤの中に見ることの出来る人は、犬や猫やパンダや、花や花瓶やテーブルや、そしてもちろん数多の鉱物たちの中にも、同じ「命の水」を見ることができるに違いない。

付記:ダイヤモンドはキンバレー岩中に産するのが有名である。斑状または角礫状の橄欖岩で、雲母を多量に含み、ダイヤモンドのほか、ガーネットやチタン鉄鉱、クロム鉄鉱などをも含むことが多い。cf.No.806

補記:ダイヤモンドは日本には17世紀後半から18世紀書の頃に舶来したとみられ、鑽石(ぎやまん)と呼ばれた。西川如見「増補華夷通商考」(1708)にオランダ土産の一つとしてギヤマンを挙げ、「またデヤマンとも言う。その色紫赤多し。鉄槌にて打ても砕けず、金剛石菩薩石の類なりと言う」とある。平賀源内は「物類品隲」(1763)でやはり「鉄錐を以て撃て傷ざるを真とし…」と書く。玉石や磁器を彫るための磨き砂で、色の悪い多結晶質の小粒と思われるが、ほんとに砕けないのだろうか。

補記2:画像の標本の結晶面に見える模様は成長過程を示すものというよりも、一般に、結晶が高圧環境から低圧環境に移った影響(融蝕)で発生した蝕像と考えられている。

鉱物たちの庭 ホームへ