110.燐銅鉱とトルコ石 Libethenite (オーストラリア産ほか)

 

 

緑と水色の組み合わせが、名コンビといわれています。

燐銅鉱とトルコ石−オーストラリア、クイーンズランド州、錆び錆び山産

燐銅鉱の脈 −ポルトガル、エストレモス産

 

前項で名前が出たので、紹介しておこう。深緑色の三角形状(正四面体)の結晶が、燐銅鉱である。

オリーブ銅鉱と非常によく似た鉱物だ、とモノの本には書いてあるが、市場に出ている標本は、たいていこの写真のような形をしているので、あまり似ている気がしない。でも、自分で採集することになったら、多分、見分けがつかないんだろう。(オリーブ銅鉱は、毛束状、剣状の標本がよく市場に出ている。)

アリゾナ州モレンシー産の本鉱の標本を持っているが、付属のラベルは「ラドラム鉄鉱」となっている。結晶の形はひしゃげた長柱状で、買ったときから、色は違うし結晶形も変だし、怪しいと思っていたが、まさか燐銅鉱とは見抜けなかった。正四面体とだけ覚えていると、こんな風に足を掬われる。毛状、針状、柱状…いろいろな形状を取り得る、それが鉱物の本性なのである(ほんとかよ)。

鮮やかな水色の部分は、トルコ石。ちょっとだけ結晶っぽいが、融けてしまって結晶面はほとんどわからない。でも、ラベルにはちゃんと「結晶!」と書いてある。そんなんばっかりね。

cf. No.109 ユークロアイト(リベテン産)

 

追記:下の標本の産地エストレモスはスペインとの国境近くの町で、90年代にこのタイプの晶脈(晶腺)状の群晶標本が出回った。脈状の空隙に石英(水晶)が晶出し、これを覆って燐銅鉱が生じている。擬孔雀石を伴う。実際には近くにあるミゲル・バカスという小さな鉱山で採れたものとみられる。
ミゲル・バカス鉱山は1925年から86年にかけて、間欠的に稼働して銅を掘った。燐酸塩二次鉱物が豊富に見られ、本鉱、疑孔雀石、ライヘンバッハ石などの標本を出した。1985年に露天坑の42mレベルで燐銅鉱の1cm大の結晶を出したことで有名。

トルコ石は潜晶質の微粒塊状で産するのが普通で、上の標本のように透明感のある晶質のものは珍しい。美麗自形結晶は米国バージニア州リンチ・ステーション産に止めをさす(No.251)。(2019.6.29)

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