115.ペクトライト Larimar (ラリマー) |
ラリの海(色の濃い上質の石を研磨したもの)
カリブ海に浮かぶ小さな火山島(ドミニカ共和国)で、美しい水色のソーダ珪灰石が採れる。
1974年に米国平和部隊ボランティアのノーマン・ライリングが発見し、現地の宝石商ミゲル・メンデスによって、ラリマーという商品名で売りに出された。ミゲルは愛娘のラリッサ(ラリ)と、スペイン語の海(マール)とに因んでその名を思いついたという。よく奥さんにぶっとばされなかったことだ。
カリブと言えば、強烈な太陽とバイタルな空気、鮮やかな青い海と海賊のイメージがあるが、「ラリの海」もまた、しばしばカリブ特有の清冽な海と空の色に喩えられている。水と風の要素を帯びたパワーストーンとして人気があるそうだが、私にはどうも宣伝が先に立っている気がして、あまり好意的に受け取れない(石としてのラリマーは好き)。
ちなみにロシアの女性名ラリサはカモメ(ラリス)のことだから、響きを言えば、ラリマーは「カモメと海」である。ラリスはギリシャ語のラロス
Laros
(海鳥の意:快い、甘い、の意もある)が語源。ラリはやはりロシア名のラーラ、ララと同根で、陽気な、守るなどの意、クララ、クラリス、クラリッサといった名は明るいとか透明という意味。いずれにしても海によく似合っている。(そう思って見るからだよ)
この種のソーダ珪灰石は、現在までのところ、ドミニカ南部のバオルコ村周辺で手掘りされているのが唯一の産地だそうだ。表面に皮をかぶっているので、一見ぱっとしない灰緑色の塊(ボルダー)だが、割るときれいな水色の断面が現れる。やや透明感があり、うまく磨くとシャトヤンシー効果を見せる(⇒No.767)。写真の左側に見えているのは、ボルダーの表面部分である。私を誘惑する陽気なカモメ。
追記:上の話を面白がった標本商の I さんが、ラリマーの専売業者に訊き込みしたところ、ラテン系の男性は、一般に妻よりも娘さんを大切にする習性があるとわかった。それは、日本人男性にしても同じはずだが…。