242.ワデ石  Wadeite (ロシア産)

 

 

わて、ワデ石でんねん

ワデ石−ロシア、コラ、ヒビーヌイ産
(黒色はエジリン)

 

馴染みのない鉱物だが、結晶界の異端児ベニト石グループに属する4鉱物のひとつといえば、少しは親しみが湧くだろうか?
ベニト石というと、三角(六角)両錐形の風変わりな結晶が有名だ。これは六方晶系の中でも ditrigonal-dipyramidal class と呼ばれる特異な構造に起因するもので、結晶学者たちによって久しく存在を予言されていたものの、ベニト石が発見されるまで実例が知られていなかったという、それくらい珍しい形状だ。で、ワデ石(K2ZrSi3O9)だが、ベニト石(BaTiSi3O9)とよく似た結晶構造を有している。厳密にはZrO6基(ベニト石では TiO6)に対する Si3O9 三角基の相対関係がやや違っているのだが、まあそれに近い六角板状両錐形の美結晶を作る。淡いピンク色が可憐だ。

本鉱は1930年代、西オーストラリア州・キンバリーで、地理学者のアーサー・ウェイドによって採集されたのが始まり。命名は彼に因む。それならウェイダイトと呼びたい気もするが、和名はワデ石で通っている。明るい青色のカソード・ルミネッセンスを示すそうだ。ごく珍しい鉱物で、標本商さんの「千載一遇的な機会」との言葉に、これまたほだされ手を出した…ははは。

備考:カソード・ルミネッセンス−テレビの画面(ブラウン管)などで、陰極線(電子)を蛍光物質にあてた時に生じる蛍光現象

追記:後から聞いた話だが、標本商氏は、この標本を Wadalite(和田石)と思って大量に仕入れ、帰国してから間違いに気づいたそうだ。幸いすべて捌けたから笑い話になった。日本のコレクターは氏の錯覚のおかげでこの珍石を入手出来たのだから、これぞ千載一遇というべきか。

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