253.ガスパイト Gaspeite (オーストラリア産) |
カナダのガスペ半島で最初に発見された鉱物。ガスペアイトともいう。カルサイト(方解石)グループのひとつ。菱苦土鉱のマグネシウム成分がニッケルに交替したものに相当し、硫化鉱物から二次生成することが多い。たいてい塊状で、結晶は稀。ニッケルを含んでいるが、製錬が難しく、あるいはコストがかかるため、原産地のニッケル鉱山ではギャングと呼ばれて、ズリに捨てられていたという。しかし近年、独特の黄緑色が注目され、ラピダリー用の原石として漸く活路を見出しつつある。
私がこの石を初めて見たのは10年ほど前の鉱物フェアだった。オーストラリアのディーラーが、「私たちは新しいジュエリーを提案します。」と垂れ幕下げてPRしていた。以来、おいおい見かけるようになったが、盛り上がりは今ひとつか。私見では、名前が宝飾品のイメージにそぐわないのだと思う。ガスパとかガスペとか、響きが美しくない。
当のオーストラリア国内では、Allura(アルーラ)の名で販売されていて、これは英語のAllure(誘う、魅惑する)に通じている。策略だな。ロシアのチャロ石(魅惑する石の意)のように人気が出るといいね。
方解石系ではもっとも高い硬度 4.5〜5をもつが、トルコ石(硬度5〜6)よりまだ柔らかい。とはいえ、トルコ石と同様に樹脂含浸してしまえば、ノープロブレム。オーストラリア産の標本(上の画像)は、概して色が鮮やかで、カナダ産と比べて質もよいように思う。