258.ショーロマイト  Schorlomite (モロッコ産)

 

 

チタンざくろ石 - モロッコ、ミデルト産

 

「ガーネットは、☆(SiOの一般形式をもつ」とNo.249に書いたが、ショーロマイトは、☆にカルシウム、★に4価のチタン(と3価の鉄とアルミニウム)が入り、さらに(SiO)基の珪素の一部が鉄の3価イオンと2価イオンとに置き換わった鉱物である。化学式を書くと、Ca3(Ti4+,Fe3+,Al)2[(Si,Fe3+,Fe2+)O4]3 となる。ああ、ややこしや。
これを灰鉄ざくろ石−CaFe(SiO)と比較すると、第二項の鉄の一部がチタンに置き換わったものが亜種メラナイトであり、さらにチタンが昂じて鉄より多くなったものがショーロマイトだといえる(ちょっとだけ違うが)。色はメラナイトと同じ真っ黒で、肉眼での区別はまず無理。その様子は真っ黒なショール(鉄電気石)にも似ている。ショーロマイトとは、ショール・ホモ・イト、すなわちショールと同じような石という意味だ。

写真の標本は、ある標本商さんと初めておつきあいした時に、氏のプライベート・コレクション(ときどき、自分用にいい標本を取っておく業者さんがいるのだ)から頒けてもらったもの。実は取り置きをお願いしていたところ、氏はそれを誤って別の人に売ってしまったのである。本鉱の標本は案外少なく、仕方がないので、秘蔵の品(2個持っていたうちの1個)を回してくれたというわけ。心遣いもさることながら、同じ値段でより質のいいものを戴けて、私はうれしかった。ありがとう。

 

追記:実際の産地はミデルトから南西に 20km にあるハイ・アトラス山脈。始新世中期にアルカリ〜パーアルカリ火成岩が貫入した複合含体で、かすみ石閃長岩の露頭にかすみ石の自形結晶や本鉱が見られる。 1990年代の終わり頃、 Jebel Aouli と呼ばれる風化火成岩の石切り場からこれらの美麗標本が市場に流れた。 (2020.5.30)

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