249.灰鉄ざくろ石 Andradite (ロシア産) |
ガーネットは、☆3★2(SiO4)3の一般形式をもった鉱物である。☆の部分には2価の金属イオン(カルシウム、鉄、マグネシウム、マンガン)が、★の部分には3価の金属イオン(アルミニウム、クロム、鉄、マンガン、チタン、バナジウム、ジルコン、珪素)がそれぞれ入る。その組み合わせによってさまざまな成分のガーネットが導かれるが、現在天然に知られているものは15種類である(参照)…(20種あるとも…)。これらを端成分として、中間に複雑な固溶体成分の亜種が存在する。代表的なガーネット6種と固溶体の関係を図示すると下図のようになる。連続的な固溶体を作る端成分間を実線で、部分的な(端成分から10%程度の)固溶体を作る組合せを破線で結んでいる。
この6種のガーネットは、図から分かる通り、2つの連続固溶体シリーズに区分することが出来る。
図の左半分、パイロープ、アルマンディン、スペッサルティンの三者は、Al(アルミニウム)が一定で、Mg,Mn,Fe
の金属が互いに任意の割合で置換しあう関係にある。3者の頭文字をとって
Pyralspite(パイラルスパイト)と総称する。
右半分のウバロバイト、グロッシュラー、アンドラダイトの三者は、Ca(カルシウム)が一定で、Cr,Fe,Al
の割合が任意に変動する。同様に
Ugrandite(ウグランダイト)と総称する。
さて。No.243、244に続き、このページもアンドラダイトの標本の紹介だ。上2つは、いずれも表面にメタリックな光沢が現れ、アンドラダイトとして典型的な姿のものだという。上の標本は透明感があって、黄金色に輝く。お気に入りのひとつ。中の標本は緑がかったところがエキゾチックでよい。下の標本はチタンを含む亜種で、メラナイト(黒柘榴石)と呼ばれている。名前の通り黒く、19世紀の後半、モーニング・ジュエリー(葬儀用の宝飾品)が流行した時には、随分重宝されたらしい。ある標本商さんが言うには、店に出すと必ずお客さんが買って帰るそうだから、今でも一定の人気を保っているのだろう。結晶面に優れた光沢がある。この亜種はチタン成分が昂じると、ショーロマイト(チタンざくろ石)という別種になる。メラナイトやショーロマイトでは、副成分の Fe3+が、普通種とは違った仕方で酸素と結合し、それが光を吸収する働きを持っているために黒くみえる。
cf. No.829 補記1(アロクロイト:Allochroite) No.893 灰バナジンざくろ石