291.カーナル石 Carnallite (ドイツ産)

 

 

19世紀のプロシア(ドイツ)の鉱山技師、ルドルフ・ヴォン・カーナルに因んで名づけられました。

カーナライト(光鹵石) -ドイツ、チューリンゲン、ビショッフロード・カリ鉱山産

 

海水は平均3.5%の塩化ナトリウム(岩塩)を含むが、ほかにも鉄分、カルシウム、マグネシウム、カリウムなどさまざまな成分を溶かし込んでいる。
普通に濃縮していくと、残液が約半分になった段階で、まず酸化鉄の水和物や炭酸カルシウム(方解石)が生成する。20%くらいになると石膏が析出する。10分の1に減ると岩塩が出てくる。さらに濃縮を続けると、カリウムやマグネシウムの複雑な塩類が現れる。カーナル石(KMgCl・6HO)はそのひとつである。水によく溶ける。

上の経過から想像されるように、岩塩は濃度の高い塩湖でも析出するが、カーナル石はほとんど干上がった場所でないと見出せない。そしてたいてい岩塩、シルビンその他の塩類を伴って出る。シルビン同様、岩塩に比べると量は乏しいが、それでも膨大な岩塩鉱床中(とくに上層)にまとまって存在することがあり、シルビンとともにカリウムの重要な鉱石として採掘される。カリウムの最大の用途は農業肥料である。

この標本はドイツのカリ鉱山に出るもので、岩塩との混合物と思われる。というか、実はどの辺りがカーナル石なのかよく分からない。ポーランド産の岩塩に、まったく同じ外観の標本があり、万一まぎれてしまったら、ちょっと区別がつかないだろう。
ただカーナル石は岩塩より苦く、収斂味がある。最後は自分の舌がモノを言うはずだ。だ。
ちなみに赤味が差しているのは、微粒の酸化鉄(ヘマタイト)を含むためで、本来の色ではない。
和名はかつて光鹵石(こうろせき・こうろうせき)と呼ばれた。カリを含む塩類をカリ塩類と総称し、シルビン Sylvite、本鉱、ポリハライト(雑鹵石) Polyhalite などが含まれる。カリ肥料の原鉱として利用される。(⇒ひま話 リンの利用(肥料として)

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