292.シルビン Sylvine/Sylvite (フランス産)

 

 

おいらシルビン。苦いよっ。

シルビン(カリ岩塩)−フランス、ミュルーズ産

 

シルビン。シルヴァイト。KCl。塩化カリウム。
海水や塩水中に含まれ、蒸発に伴って析出するのが一般的。カリ岩塩とも呼ばれ、岩塩と同じ結晶構造を持っている。物理的性質も似ている。ただしカリウムイオンはナトリウムイオンより相当大きいので、両者の間で固溶体が作られることはほとんどない。それぞれ勝手に析出して混合物をなす。
この標本も岩塩とシルビンの混合物(Sylvinite という)と見られるが、これまた、どの辺がシルビン?と聞かれると困ってしまう。しかし標本商さんが言うのだから、シルビンが含まれているのは間違いないであろう(おいおい)。やはり鉄分のために赤くなっている。

溶解度が高いので岩塩よりも晶出が遅れる。互いに層をなして生成することもあるが、これは蒸発の盛んな夏季にシルビン(と岩塩)が、ほかの季節には岩塩が析出するからだという。
結晶は岩塩に似た立方体を作るが、8つの角が欠けた八面体式の面を見せることが多い。鑑定の決め手はカーナル石同様その味で、塩味の中に幾分苦味が混じる。まずい。またナイフの刃で表面をこすると、岩塩は粉を出すが、シルビンは出さないともいう。打撃を与えると岩塩は粉末になりやすいが、シルビンは表面が変形したようになるばかりで、またガラスに挟んで圧迫すると、岩塩は粉末化し、シルビンは流動化する。カリウムの重要な鉱石である。

ちなみにミュルーズでは、青〜紫色をした繊維状の岩塩結晶が脈を埋めて産し、絹糸光沢を示すことで有名。この標本も破面をよく観察すると、細い針状結晶で構成されていることが分かる。

cf.No.291 カーナル石  ウィーンNHM蔵

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