336.珪ニッケル鉱 Garnierite (ロシア、USA産ほか)

 

 

ヌーメア石(珪ニッケル鉱) −ニューカレドニア産

結晶質っぽい、暗緑色の珪ニッケル鉱 
-ロシア、ウラル、リボフスキー採石場産

鮮やかな翠色の非晶質珪ニッケル鉱(もろい) 
−USA、オレゴン州、リドル近郊ニッケル山

 

19世紀の終わり、南洋ニューカレドニア島の首都ヌーメア近郊で、もろく砕けやすい暗緑色の石が発見された。主成分はニッケルとマグネシウムを含む含水珪酸塩で(らしーよ?)、蛇紋岩を貫く脈中にクロム鉄鉱や凍石(タルク)を伴う産状。後にニッケル鉱石として重要視される珪ニッケル鉱の始まりであった。
やがて、ラテライト化した蛇紋岩の最下部にこの種の鉱石が脈をなして存在していることが、世界各地で明らかにされた。また熱水作用によって蛇紋岩中のニッケル分が滲出→沈殿した部分にも、細い脈をなして生成することが分かった。
ただ、この鉱石は必ずしも均質でなく、組成も一定しないようである。X線で結晶構造を解析すると、ほとんど非晶質であるという。風化によって生じるものに違いないが、変質後に再結晶出来るほど自由な分子運動が実現されなかったのだろうか。それとも本来的に不定鉱物の混合体なのだろうか。
脂状のもの、舌頭に付着するもの/しないもの、脆い粉末状のもの/硬いガラス状のもの…。
鮮緑色で舌頭に付着する性質のある鉱石をGarnierite、暗緑色で砕けやすいものをNoumeaite と区別されたこともあったが、イマイチ正体がはっきりしないまま、珪ニッケル鉱は独立種でないということに決まった。

というわけで、比較的新しい鉱物書にも、「ニッケルを含む蛇紋石の一種で、特徴的な緑色を呈する」とあったり、「成分の一部はリザーダイト(蛇紋岩の一種)である」、「その成分に Nepouiteを含む」などとあって、やっぱりなんだかよく分からない石なのである。ただ、蛇紋岩に関係して産することは、マチガイ・ナイ。

備考:
ラテライト−硬化してレンガのようになる石の意。風化生成した硬化性土壌であり、
       主成分はゲーサイトやボーキサイトなど
Nepouite−ニューカレドニア島ヌプイ原産の鉱物で、
       かつてはニッケルを含む緑泥石の一種と信じられていた。
       Genthite(鍾乳状、皮殻状などで産する淡緑色の石)も同種

       またPimelite は珪ニッケル鉱やNepouiteの混合物であるという。

追記:島崎先生のサイトに、珪ニッケル鉱はニッケルに富む風化残留物の一種の鉱石名で、特定の鉱物名ではない、とある。苦鉄質マグマからカンラン石が晶出するとき、ニッケルはマグネシウムよりも優先的に取り込まれる性質があることから、ニッケル分に富んだカンラン石となるケースがある。それが高温多雨の環境下で長期間に風化分解されて、滑石や緑泥石、蛇紋石など層状の結晶構造を持った含水珪酸塩鉱物となる(一部は非晶質)。その変化において、やはりマグネシウムよりもニッケルが優先的に取り込まれて生じた風化残留物が本鉱である、と。
ニューカレドニアは、かつての海洋底が島嶼として地表に現れた箇所で、海洋底下部に広く発達したカンラン岩や、その変成した蛇紋岩が風化して、大規模な珪ニッケル鉱の鉱床を形成している。風化は地表から数m〜20mまで進行して、ニッケル分は2〜3%に達する。この種の層状含水珪酸塩鉱物からは(カンラン石などと比べて)容易にニッケルを取り出せるため、ニッケルの重要な資源となっている。 (日々雑感 82 鉱石の生い立ち(2)ニッケルその2 参照)
また飯山先生の「鉱床学概論」は、かんらん石と反応した水の中に含まれたニッケルが珪酸ゲルに吸着されて濃集され、やがて固化して緑泥石その他の含水珪酸塩となったものを一括してガーニーライトと呼び、ニッケルの鉱石として採掘される、と説明している。

cf. No.892 補記3

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