337.ラピス・ラズリ Lapis Lazuli (ロシア産)

 

 

方解石(白)や黄鉄鉱を伴うラピスラズリ -ロシア、バイカル産

 

シベリアのラピスラズリは色目がやや暗い。だが、その暗さに真っ白な方解石が出逢ったとき、あたかも滲んだインクのような、あるいは夜空を染める星雲のようなグラデーション効果が生じ、この石の最高の美しさが現出する。黄鉄鉱の散粒が燦たる星々を描けば、神秘的な雰囲気はさらに深まる。私見では、バダフシャンの鮮やかな青ラピスも、この絶妙の彩りに敵わない。

上の標本は、1930年代に作られたもの(といっても卵形に磨いただけ)。
シベリア産のラピスは黄鉄鉱を伴わないと決めている方があるかもしれないが、(No.324参考)、伴うこともやはりあるのだ。
ちなみに私は見たことがないが、この地方のラピスには、中心が明るい赤色をしているのに、まわりは深青色というものがあるそうだ。これは、もともと全体が赤色だったのが、熱影響を含むさまざまな環境変化によって、周辺が変色したものらしい。ラクスマンが語った通り、シベリアのラピスラズリはとても変化に富んでいる。

ついでに言えば、ラピスラズリは加熱による色の変化が比較的大きい鉱物である。特に薄い青色の石は、ゆっくり低温加熱を続けると、非常に美しい濃青色になって、宝石としての価値が増す。一方、濃緑色のものは、加熱するとあいまいな緑青色になり、さらに温度を上げて加熱すると無色になってしまうという。しかし、いったん無色になったものでも、冷やすと再び緑青色に戻る。チリから産出する緑青色のラピスラズリにその傾向が強いという。

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