339.五水灰硼石 Pentahydroborite (日本産)

 

 

五水灰硼石 −岡山県川上郡備中町布賀産

 

1961年にシベリアから報告された鉱物。当時は単位あたり5個の水分子に水和された石灰硼酸・水酸塩として記載されたが、後に2水和物であることが分かった。それなら dihydroborite 二水灰硼石と改名すればいいと思うのだけれど、今も五水で通っている。語呂がいいからかな。

布賀産の本鉱は、逸見石同様、数年前まで希少標本だったが、先頃大量に市場に出た。噂に聞いたお話では、ある方が採石場の坑内を見学していて、足元に本鉱が転がっているのを見つけた。なぜこんなところに? と壁面を見あげたところ、数mの高所に窪みがあるのに気づいたという。かの逸見石の晶洞が隠されていたのはこの奥なのであった。
ああ、鉱物に愛されし人よ。

補記:布賀は高温(800℃以上)生成の特殊なスカルンで、希産種の宝庫である。五水灰硼石は 1977年に愛好家の岡田久によってここの石灰鉱山から発見され(採集済みの標本をある民家で研究用にと譲渡されたそうだ)、ロシアに次ぐ世界2番目の産地となった。肉眼的な自形結晶の確認された最初の例という。同じ年の末、坑道内に露頭が発見された。本鉱の脈中の晶洞に伴っていた微小な青色の結晶鉱物は、その後、新種「逸見石」となった。

補記2:IMA-list の理想組成は CaB2O(OH)6・2H2O。原産地 トランスバイカルのソロンゴから、 1976年に同種の鉱物としてヘキサハイドロボーライト Hexahydroborite が報告されている。六水灰硼石の意だが、こちらも実は2水和物であることが分かった。布賀でも報告されている。組成 Ca[B(OH)4]2・2H2O。方解石(比重 2.71〜)に似るが、比重 2.03 で軽い。六水灰硼石は比重 1.87でもっと軽い。

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