348.コバルト華 Erythrite (モロッコ産) |
特徴的な色彩のコバルト華は、コバルト(やニッケル)鉱床の上部酸化帯によく見られる二次鉱物で、孔雀石が銅鉱のカンテラであると同じように、コバルト鉱の所在を示すパイロットランプとされてきた。
学名 Erythrite
の語源はギリシャ語の「エリスロ(赤い)」。別名に Cobalt bloom,
Red cobalt, Cobalt ocher などがある。組成は8水和砒酸塩で、藍鉄鉱やニッケル華と共通の結晶構造を持つ。実際コバルトの一部がニッケルや鉄(や亜鉛やマグネシウムや)に置き換わっていることも多い。その場合、色が薄くなったり、濃淡縞が現れたりするが、基本的に赤紫色が残る。一方、乾燥した粉末は濃紫青色を呈するという。塩酸に溶けてピンク色の溶液を作る。
付記:余談だが、A.M.デル・リオ(1764-1849)は、イダルゴのカルドナル鉱山に出る「シマパン産の褐色の鉛」鉱石に新金属らしきものが含まれていることに気づいた。その金属の塩はさまざまな色を呈するので、最初はそれを「パンクロミウム panchromium」と呼んだが、塩をアルカリ類や土類といっしょに加熱したり酸処理すると赤くなるので、「エリスロニウム erythronium 」と呼び換えた。現在、ヴァナジウムと呼ばれる元素である。cf.No.164 バナジン鉛鉱