349.ローゼ石 Roselite (モロッコ産) |
No.344に本産地のコバルト方解石を紹介したが、もちろんコバルト苦灰石も産出して、カタンガ産と同様、愛好家の頭を悩ませている(かどうかは人による)。
そのコバルト苦灰石に伴って、あるいはコバルト華に伴って、ちょっとだけ結晶形の違う、しかし色彩のよく似た二次鉱物が出る。そのひとつはローゼ石である。
下表の組成式から分かるように、コバルト華と同じコバルトの水和砒酸塩で、また方解石や苦灰石と同じくカルシウムやマグネシウムを含む鉱物である。
ローゼ石は単斜晶系の構造を持つが、第二項原子(と酸素、水)の作る八面体がひしゃげると三斜晶系に変わり、同質異像のβローゼ石を形成する。この時、水分子との結合具合も変化し、それが原因でへき開性に違いが生じる。
また第二項成分のコバルトの過半が、苦灰岩起源のマグネシウムに置き換わると、ウェンドウィルソン石になる。その三斜晶系の種がタルメシ石である。
相互間の成分や晶系の変動はわりと容易で、ブ・アズールにはこれらすべてが産出する。ひとつの結晶中に分域が生じ、色の濃淡縞となって現れることもある。ローゼ石の赤紫色はコバルトによる発色なので、コバルトの少ないタルメシ石は緑〜茶色を帯びるとされるが、市場に出回っているものは、やっぱり淡い赤紫色をしていることが多いので(ウェンドウィルソン石も同様)、肉眼で区別するのは難しい。
補記:本鉱の和名は以前にはローズ石と呼ばれることが多かったが、ドイツの鉱物学者グスタフ・ローゼ(1798-1873)に因むことから、最近はローゼ石の表記が多くなっている。
Fairfieldite/Roselite Group |
||
Roselite Sub Group | Fairfieldite Sub Group | |
(単斜晶系) | (三斜晶系) | |
へき開明瞭 | へき開不明瞭 | |
ローゼ石 Roselite | ⇔ | βローゼ石 β-Roselite |
Ca2(Co2+,Mg)(AsO4)2・2H2O | Ca2Co(AsO4)2・2H2O | |
↑↓ | ↑↓ | |
ウェンドウィルソン石 Wendwilsonite |
⇔ | タルメシ石 Talmessite |
Ca2Mg(AsO4)2・2H2O | Ca2Mg(AsO4)2・2H2O |
補記2:メキシコ産のピンク・グロッシュラーも Roselite または rosolite と称されるが、当然別モノ。