404.赤水晶 Quartz (モロッコ産)

 

 

鉄水晶(赤鉄鉱を含んで赤くなった水晶)
 -モロッコ、アウーリ産

 

鉄を含んで紅くなった石英(玉髄)を、紅玉髄(カーネリアン)という。
しかし、同様に鉄によって紅くなった水晶は、鉄水晶とか赤水晶とか呼ばれている。紅水晶の名は、すでにローズクオーツ(薔薇石英水晶)に捧げられているから。

この鉄水晶や紅玉髄の赤には実にいろんなニュアンスがあって、黄色味を帯びているのはどうも鉄サビを連想させてイケないが、紅くて透明感のある石は、これこそ本ものといいたい充足、あるいは引力を具えている。人の体を流れる暖かい気流と共鳴しあうようで、よい。
ルビーの鮮やかで暗い赤は目を惹き、また深く秘めた情熱を貫いて、それもまたいいのだが、こちらの赤はもっとおおらかで、人を選ぶ気配を持たない。気がする。

ナポレオンはどんな高価な宝玉よりも紅玉髄を愛し、印章に用いて肌身離さなかったという。
英雄のイメージに似合わないふうだが、彼の精神に呼応するなにかがあったのだろう。印面には「神にすがる僕(しもべ) アブラハム」と刻まれていた。

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