423.紅水晶 Rose Quartz (USA産) |
ロゼッタ状(花弁状)に散開した紅水晶が、曹長石母岩上の浅い晶洞にまつろう。若干の微小な燐酸塩鉱物を伴う。産地は世界的に数少ない自形紅水晶産地として一部の愛好家に知られた地。
1965年6月、クリフォード・アール・トレビルコック氏(1920-2000)採集とラベルにある。さて、どんな方だったのか。最後まで石に囲まれて楽しく過ごされたのか。
補記:メーン州ラムフォードとニューリーの町付近に燐酸塩ペグマタイトが分布しており、その一つ、プランバーゴ山の山頂あたりのペグマタイトから紅水晶が出る。産地は "Rose Quartz Crystal locality"と呼ばれ、1942年にジョージ・クルッカーが発見して以来手掘り採掘が行われていたが、60年代には発破を使ってピットを掘るようになった。花崗岩の母岩に 1x3cm以下のサイズの結晶がついている。市場にはあまり出回らない知る人ぞ知る標本。産状的に紅水晶の発色に燐酸が関与していることを窺わせる。cf. ひま話 薔薇の名前
ちなみに自形結晶を示す紅水晶が世界で初めて発見されたのは同じメーン州オクスフォード郡のマウント・マイカ(雲母山)だったそうだ。ここは
19世紀初からリチア電気石が採れることで知られた丘陵地で、1920年代半ばにディック・ネヴェルが紅水晶の結晶を報告した。
その後は上述のプランバーゴ山にお株を持っていかれた観があったが、2006年9月13日に巨大な晶洞が開かれた。宝石質の緑色エルバイトや煙水晶と共に、ブラジル産の最良品に匹敵する紅水晶が採集されて、一躍脚光を浴びた。(2022.1.1)