460.青金石/方ソーダ石 Lazurite/Sodalite (ミャンマー産)

 

 

lazurite sodalite ラピスラズリ ソーダライト

Lapis Lazuli ラピスラズリ

ラピスラズリの結晶 表面(上)と破面(下)
−ミャンマー、モゴック、タバンピン、オン・ビン・イェー・ヒッチェット鉱山産

lapis lazuli ラピスラズリ

Lapis Lazuli Sodalite ラピスラズリ ソーダライト

ラピスラズリ〜方ソーダ石 表面(上)と破面(下)
−ミャンマー、モゴック北東部、ピャン・ギー鉱山産
(ピャン・ピイットの西方)

Lapis Lazui ラピスラズリ

ラピスラズリ(研磨面)  左上部は照明灯の照り
−ミャンマー、モーゴウ、オーン・ピン・イェー・ヒチェット鉱山産

sodalite ソーダライド

方ソーダ石の結晶 
−ミャンマー、モゴック、オン・ビン・イェー・ヒチェット鉱山産

 

モゴック谷の東部エリア、オン・ビン・イエー・ヒチェットの名で通る新しい鉱山(脚注参照)から採れたラピスラズリと方ソーダ石である。方解石をコアに抱き、周りをラピスラズリが取巻いた白餡ノジュールを形成するのが典型的な産状だという。外側にいくほど青が濃くなってゆくのはいかにも生成の秘密を宿している感じがあって、しかも自形結晶面の出ているところがスバラシイ。 こうした形は変成作用によって成分の交代が外側から内部に向かって進行するためと解釈できるそうで、中心の白餡は大理石である。ラピスラズリと方ソーダ石は分類上別個の種だが、生成時には連続して出来ることもある、とこれらの標本は主張しているようである。
そういえばバダフシャン産の結晶標本に、面が欠けて白っぽい内部の見えているものがある。それは発色要因である硫黄成分の不足で論じられているが、この場合も同様の説明が成り立つかもしれない。黄鉄鉱はほとんど混じらない。
O.B.Y.ヒチェットは、斑模様のラピスで知られるダッタウ鉱山からわずか数キロ離れただけの土地にある。それにしてはまるで違った趣きの石を産するもので、現地の地質学的環境の複雑さを物語っているようでもある。ダッタウがさびれた今、これからはこちらがミャンマー・ラピスの顔になってゆくかもしれない。

3つめの画像は磨き石で、明るい青色のおもてに暗い群青色のサネのような粒が嵌まり込む。黄鉄鉱の金粒は、やはりけぶりもない。

4つめの画像は同じ鉱山から出た方ソーダ石…だそうだ。
といっても、比重と暗い色目とが鑑定の根拠のようで、ほんとうにその通りかどうか断言できない気がする。名著「楽しい鉱物図鑑」に、方ソーダ石は「ラピスよりも色が暗い。透明感があり、粉末にすると色は淡くなってしまうので、顔料には利用できない」とあるが(ラピスラズリの方は古来、顔料として利用されてきた)、例えばバダフシャン産の方ソーダ石の結晶など、色目はむしろラピスより明るい青で、透明感はない。ならば、色目(や透明感)は必ずしも決定的な証拠といえないのではないか?
ちなみに一番上の標本を入手した業者さんは、標本の表面の明るい青の部分はピュアな青金石で、暗い部分は方ソーダ石ではないか、と言うのだが、どうだろう? 
(2番目の標本を入手した業者さんはその逆を言っている)

No.459で、「タベイピンには2つの産地があって…」と紹介したが、標本の雰囲気からすると、O.B.Y.ヒチェットもやはり初生鉱床を掘っているように思われる。ということは、さらにもうひとつの産地が、漂砂鉱床の礫に混じって産するラピスラズリが、付近にあるのだろうか。いつか出会いたいものだ。

脚注:上二つの標本はほぼ類似の産状だが、一方は「オン・ビン・イェー・ヒッチェット鉱山」のラベル、一方は「ピャン・ギー鉱山」のラベルがついていた。業者さんのお話によると、オン・ビン(Ohn Bin)は町の名前で、周辺にピャン・ギーを含めたいくつかの小規模な鉱山があって、そうした鉱山から取れた宝石を売るマーケットが立っているという。その場合、原石や宝石はオン・ビン産として扱われる。ピャン・ギーから流れてきた原石がオン・ビンで採れることもあるという。ピャン・ギーは大理石を母岩とする鉱山で、ここで紹介した標本はいずれも川流れの形跡を持たないから、おそらくはほんとうの産地はピャン・ギーなのだろう。

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