485.バーガー電気石 Fluor-buergerite (メキシコ産)

 

 

Tourmaline var. Buergerite バーガー電気石

ベルゲ石またはビュールゲライト(トルマリン) 
−メキシコ、サン・ルイス・ポトシ、Mexquitic産

 

Buergerite は希産種のトルマリンで、和名はバーガー電気石、ビュールゲライト、ベルゲ石などと呼ばれている。鉄電気石とよく似た組成の鉄トルマリンだが、鉄電気石中の鉄イオンが+2価であるに対して、+3価として働く。増えた正電荷は、通常水酸基(−1価)が4ケあるところ、代わりに3ケの酸素基(−2価)と1ケのフッ素基(−1価)が入ることでつりあいが取れている。フッ素が入るのは、酸素基によって歪んだ構造形を支えるためだそうで、自然界の精妙な均衡と柔軟な対応に舌を巻く。
もちろんトルマリンとしての結晶構造や物性は保たれている。
発見されたときには特殊な鉄電気石と考えられたそうだが、本鉱を他の電気石(例えば苦土電気石や褐色のリディコート電気石)と肉眼的に区別するのは難しいだろう。 ただ苦土電気石は通例、変成岩に伴い、本鉱は特殊な貫入火成岩体に伴うといった産状の違いを勘案することは出来る。

本鉱の標本は原産地がほぼ一手卸元で、本品も然り。ピッツバーグにあるカーネギー自然史博物館の蔵品が競売にかけられて巡ってきた。流紋岩(リョーライト)の表面に暗褐色亜透明の結晶が群れている。  一説によると、原標本の発見者は正確な場所を公表せず、そのままお亡くなりになったという。その時点で原産地は不明となったわけであるが、再発見に尽力したのが、デル・リオ以来のメキシコ産標本コレクターと讃えられるミゲル・ロメロ氏である。二人の地質学者を雇ってバーガー電気石に伴う岩石類と似た地質の土地を探させた。そしてバーガー電気石が見つかって産地が公表された。ロメロ氏のコレクションには実に見事な大型結晶標本が加わった。

(補記) トルマリン・グループの系統整理に伴って、Buergerite から Fluor-buergerite に改名された(2011年)。

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