486.軟玉 Nephrite (カナダ産)

 

 

Nephrite (Polar Jade) ポーラー・ジェード

Nephrite (Polar jade) ポーラー・ジェード

ポーラー・ジェードのスラブ(切断面) 順光&背光撮影 
-カナダ、BC州ポーラー鉱山産

 

カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州ディーズ湖の東方50キロの山の上に、ポーラー鉱山という軟玉の産地がある。ここで採れる石はポーラー・ジェードと呼ばれて、世界最高品質のネフライトとの評判をとっている(私はニュージーランド産も悪くないと思うけど)。
上質の石は鮮やかなアップルグリーン(またはエメラルドグリーン)の色合いを呈し、透明度が高く、斑状の夾雑物やクラックをほとんど含まない。 それはミャンマー産の宝石質ヒスイに匹敵すると評価されていて、発色はおそらくヒスイと同じ要因に拠るとみられている。翡翠の鮮やかな翠色がクロムに起因するかどうかは異論もあるが、ポーラー・ジェードが比較的高濃度のクロムを含むことは確からしい。いずれにせよ、硬玉だ軟玉だと区別をつけることに、もはや意味はないといった気分にさせられる素敵な石である。

ポーラー鉱山で軟玉の採掘が始まったのは1990年代に入ってからだが、年100トンペースの産出が続いているそうで、カナダ産の半分弱、世界生産量の3分の1がこの鉱山の石で賄われている計算である。 そうなると当然すべてが最高級のAAAグレードというわけにはいかないし、ある宝石業者さんのお話によると、BCジェードの多くは緑色に染色処理されているという。 鉱山では短い夏の間、日に10時間、毎日休みなしの作業が続けられる。そして厳しい冬が来る前に原石はディーズ湖畔に降ろされ、トラックに積まれて、スチュアート=カシアー・ハイウェイを一路南へと運ばれる。上質の原石の供給は近年急速にタイトになっているそうだが、多分誰かがコントロールしているのじゃないかな。

上の標本はA+級のスラブ(ラピダリー用の薄片)で、光を透かすと若葉の緑色が眩しい。クラックや濃緑の斑状インクルージョンが見られるが、標本としてむしろ好ましい。 画像では分かりにくいが、酸化クロム(青砥)のような緑色のスポットがところどころに入っている。灰クロムざくろ石だと思う。同様のスポットは、ユーコンやアラスカ産の軟玉にも見られるようである。 ちなみにポーラー・ジェードはほかのカナダ産の石と比べてやや硬度が高く、研磨性が良いらしい。

cf. No.478 軟玉(カシアー産)

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