494.ローソン石 Lawsonite (USA産)

 

 

Lawsonite ローソン石

ローソン石 (母岩は藍閃石)
-USA、カリフォルニア州ティブロン半島リング山地リード・ステーション産

 

カリフォルニア州のティブロン半島はプレート・テクトニクスにいう沈み込み収束帯に位置し、メランジェ(いろいろな岩石が破砕されて混合された地質)と藍閃石変成作用の働きを特徴づける地層が分布している。カリフォルニア大の地質学者だったA.D.ローソン博士(1861-1952) は、ここを模式地として、フランシスカン・コンプレックスと命名された地質の研究を行った。
ローソン石は半島のリング山地で発見され、1895年に博士に献名された鉱物である。蛇紋岩に伴う結晶質片岩中に含まれて、世界に数少ない肉眼的な結晶が見出される。ここはさまざまなテクトニック・ブロックが集まった興味深い土地だそうで、現在は地質全体が保護されている。

ローソン石は1950年代までは、たくさん採集されていたらしいが、最近ではほとんど市場に出回らなくなっていた。ところが2004年のツーソン・ショーで、突如、約200点の標本が出現して耳目を集めたのだ。それはすべて一人のコレクターが採り貯めたもので、1970年に彼が亡くなってから、サン・フランスシスコにある自宅のガレージに古新聞に包まれて埋もれていた。彼の妻は夫の蒐集物に手を触れようとしなかったが、2003年4月に彼女が他界すると、子供たちは家を売るために古物の処分にかかり、地元の標本商を呼んで石を見せた。そうして今では入手し難い標本が世に現れたのだった。(新聞の日付によると 1952-56年の間に採集されたらしい。)

…と書いたが(この経緯はMR誌にも載っているし、業者さんのサイトでも宣伝されていた)、上の標本は1962年までに標本商の手に渡り、長らくある愛好家の手元にあったものである。
藍閃石に伴ってローソン石の柱状結晶が成長しているのがよく分かる。この2つはストレス鉱物といって、断層帯など圧力のかかる領域で変成作用によって生じるのだが、ローソン石は温度が高くなると緑簾石やパンペリー石に変化する。藍閃石はローソン石よりも高い温度まで安定領域が広がっている。そこで両者の共存は、緑簾石と藍閃石が共存する場合に比べて、より低温環境での生成を物語っているといえる。

ローソン石は組成変化に乏しい。成分的に灰長石に水が2分子加わったものに相当し、650℃以上に熱するとこの2者に分解する。比重が大きく(3.1)硬い(硬度8)のは高圧環境下に生成されるからで、組成に水が加わっているのは比較的低温だったためである。
ちなみにローソン石のカルシウムをストロンチウムに置換した組成に相当する鉱物が、本邦原産の糸魚川石である(組成 SrAl2(Si2O7)(OH)2・H2O)。すると、上の標本のローソン石の青味は、若干のストロンチウムを含むことに起因するのであろうか?

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