503.シンハライト Sinhalite (ミャンマー産) |
ペイナイト狂騒曲の副次効果のひとつ。
ミャンマー産のシンハリ石は時々カットされたものが市場に出ていたが、標本はまず見たことがなかった。それがこの時の採集熱をきっかけに、メジャーな宝石種でなくてもお金になることが分かったのだろうか、本鉱の標本が国外に流れ始めた気がする。もともとオーン・カイ谷にはシンハライト鉱山という名の鉱山があって本鉱が出ていたようなのだが、情報が乏しく事情が分からない。まあ、そんなことは後でゆっくり考えれば(調べれば)いいことで、まずはチャンスに逢えばすかさずゲットが肝要です。
シンハリ石はセレンディーブ石と同じくスリランカで初めて採集された宝石種で、同じくスリランカの古名シンハラに因んで命名された。和名はシンハリ石が一般的か。
マグネシウムとアルミニウムのホウ酸塩で、アルミニウムの一部は鉄に置換されることがある。見かけがかんらん石の宝石種(ペリドット)に似ているので20世紀の半ばまでその影に隠れて気づかれなかった。実際そのアイデンティティは、茶色のペリドットだと思われていたカット石を宝石学者さんたちが精密な鑑定手法を駆使して検討した結果、ようやく明らかにされたものである。
ついでに言うと形態学的な研究はミャンマー産の結晶によってなされた。上の標本もそうだが、同地の漂砂レキは磨耗の度合いが浅く、結晶面が明瞭に観察できる。初生鉱床がすぐ近くにあるのだろう。
色目は淡い茶色〜黄色が普通で、タンザニア産の石にはクロムを含んでピンク色を帯びたものもあるらしい。産地はほかにロシアのアルダンがあり、またニューヨーク州でもセレンディーブ石に伴って出る。(シンハリ石はセレンディーブ石やグランディディエ石、トルマリンなどと関連の深い鉱物だと考えられている。)
この標本は入手するのにかなりの曲折を経たもので、ほとんど冗談のような経過を辿ったのだが、今書くと生々しすぎてうまくおかしみを伝えられないと思う。すこし時間をおいてから筆のすさびに出来たらいいな。
cf.最近のG&G誌にミャンマー産のシンハリ石に関する記事が出ているのを見つけました。