502.セレンディーブ石 Serendibite (ミャンマー産)

 

 

Serendibite セレインディバイト

セイロン石(やや緑味がかった黒色 ほとんど不透明)
 -ミャンマー、モゴック産

Serendibite crystal セレンディバイト

セレンディバイトの両頭結晶 −ミャンマー、モゴック、オーン・カイ産

 

セレンディーブ石(Serendibite) は、いわゆるレアなジェムストーンのひとつと目されている種である。
エレミア石やターフェ石、マスグレイヴ石、あるいはグランディディエ石といったレアジェムは、とびきり人目を惹くほどではないにしろ、レアな宝石と言われればそれなりにそうかなと思う。アウインベニト石レッドベリルはなかなかビビッドな希少宝石といえるだろう。しかしこのセレンディーブ石やペイン石はどうなのか? はたして希少価値を差し引いてなお宝石といえるのか。私としてはそれはちょっと過大評価じゃないか、と思う。なかなかベリリウンヌの心境には至らない。

セレンディーブ石はスリランカで発見された石で、すでに1903年に記載がある。その名はアラビア語でスリランカを意味する古名、サランディーブ(セレンディップ→セイロン)に因む。(cf. No.55) 適当な和名はまだないようで、セレジブ石という表記があるが、命名の意を汲めば、むしろセイロン石とでも呼びたいところだ。結晶構造的にエニグマ石グループのひとつに分類されているが、サフィリンとも似たところがあるという。

珪素に乏しいスカルンと片麻岩との間の交代作用(変成作用)によって生成されるが、かなりの高温下で、かつホウ素を含む熱水に浸された環境が必要とみられ、そのことが希産の所以となっている。スリランカのラトナプラ、ミャンマーのモゴック、ニューヨーク州ジョンズバーグ、ロシアのアルダン、タンザニアあたりにしか宝石級の産地がない。とはいえ、ほとんど黒といっていいくらいの濃緑色〜灰青色で、透明度が低いためまるで宝石らしくない。まれに、鉄分が少なくやや透明感のあるサフィリンに似た濃い青色の石が出る。
そんな鉱物だが、随分むかし、ニューヨーク産の標本を入手しそこなったがために、むやみに執心していたもので(なにしろ逃がした魚は大きい)、最近になってミャンマー産のカケラを購う機会を得た。例のペイン石(Painite)ブームの副産物である。
先年、モゴックに近いオーン・カイ谷でペイナイトが大量に発見され、近隣の住民総出で丘を掘りたくったときに、ペイナイトのほかバデレイ石ジルコンシンハリ石などさまざまな希産(宝石)鉱物が採集された。少量ながら標本が同時期〜やや遅れて市場に出回ったので、その流れにありがたく乗ったわけ。

(上の標本は)画像の通り結晶面のないカケラで、紹介するのも恥ずかしいようだが、標本商さん流に言えば、「まだお持ちでない方はとりあえず確保」である。いつか透明感のあるスリランカ産、またはミャンマー産でも結晶の明瞭な標本を手にしたいもの。「とりあえず確保」からのステップアップは標本商さん、あなたにかかっています。よ。(←心の中で名指し)

⇒下の標本は、その後、入手した両頭付きの結晶標本。手に入るなんて〜。

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