562.ボタラック石 Botallackite (イギリス産) |
ボタラック海崖で採掘が始まったのはおそらく中世の頃だろうが、文献としては1754年の文書が最古という。19世紀中頃の不況でスズ市場の新規開拓が急務だったとき、シェフィールドのある業者は純スズ製の食器セットを作って大いに宣伝した。スズ食器は美しく清潔で、料理の味をよくし、そして非常に長持ちすると。スズ食器は実際大いに流行った。ボタラック鉱山は18〜19世紀の間、大量のスズ、銅、砒素を産し、市場を担った。
1895年に海水が坑道に侵入する事故があり、折からの金属価格の低迷もあって公けの鉱山活動は中断された。(その後、20世紀に一時再開されたが、再び隆盛を迎えることはなかった)
ボタラック石は銅の塩化水酸塩で、成分はアタカマ石、斜アタカマ石、(パラアタカマ石)と同じ。この3者(+1)は同質異像の関係にある。1865年にチャーチ博士が記載したのが最初で、これはコーンワルの標本商リチャード・トーリンが博士に提供した標本によるものだった。トーリンは産地をボタラック鉱山としたが、実際にはホイール・クックで採られたといわれている。ここは後にボタラックに吸収された。鉱山のズリで採集されるそうだが、Dana's 8th には、古代のなんらかの青銅品が風化して生じたものだとある。
補記:ボタラック石は、チャーチ博士の報告後も、一般にはアタカマ石と同一物と考えられていた。しかしX線や光学上のデータは別種であることを示した。