580.青金石 Lazurite (USA産)

 

 

Lapis Lazuli ラピスラズリ

ドロストーン中のラピズラズリ(暗青部分)
-USA、ニューヨーク州バルマット、ZCA#4鉱山産

Lapis Lazuli ラピスラズリ

ラズライトと黄鉄鉱 −USA、ニューヨーク州エドワーズ、St.ジョー鉱山(ZCA #4)産

 

私たち(購入派)が手にすることの出来る類の標本は、だいたいは市場にそれなりに出回っている定番品であると考えねばならないが、最近のインターネットの普及は、昔ならまるで販売ルートに乗らなかった類の商品性に乏しい、正に標本的価値しかない標本をも時として愛好家一般の目に触れさせる機会を生み出している。

10年、にはまだならないと思うが、アメリカ産のラピスラズリについてニューヨークの有名標本商さんに問い合わせをしたことがある。いくつか産地を挙げて、ありませんか?とやったわけだが、折り返しいただいたお返事は、「自分はアメリカに本鉱が産することをしらない、文献を調べたところ、数箇所に報告があるが、多くは誤認だということだ、少なくともニューヨーク産については誤認である」というものだった。へんな例を引いて申し訳ないが、でもこれは標本商さんといえども普通の認識だったはずだ。
実際、ラピスラズリ(Lazurite)は誤認の多い鉱物で、天藍石(Lazulite)との学名上の混同はしょっちゅう起こるし、同族のほかの種、方ソーダ石やアウイン、または他種でもデュモルチェ石やコランダムなど青色系岩石との混同が考古学の分野を含めて起こりがちであった。
その原因のひとつは、報告文献や標本が世界のどこかに存在していたとしても、一般には実物を手にしたり十分にディテールの分かる写真に接して信憑性を吟味する機会が得がたかったことだろう。(超)希産品は大勢による検証にかかりにくいし、そもそもその存在を盲信するか疑ってかかるか、ということになりがちである。
ウェブの発達はそうした状況を突き破ってゆくのではないか。

上の標本は、ニューヨーク産のラズライト(Lazurite)という触れ込みで、つい先年手に入れたものだ。蛍光性の閃亜鉛鉱標本を探していて、偶然目にとまった。ほんとうか???と疑いつつ(欣喜雀躍しつつ)購入し、手にとって眺めて、多分ラピスラズリだろうという感触を持った。灰色の苦灰岩中に黄鉄鉱や閃亜鉛鉱(オレンジ色に蛍光する)を伴って暗い青色の部分があり、チリ産やコロラド産などのアメリカ大陸性のラピスラズリと比べたとき、かなり似た様相を示していると思われるからだ。
もちろん確かなところは、高額精密装置をお持ちの研究機関や標本商さんに分析してもらわねばならない。

産地のZCA#4は、閃亜鉛鉱などを鉱石とする亜鉛鉱山として稼動された。現在は採算性悪化のため休山しているが、国際市場の変動いかんによっていつでも再開を視野に入れているという。
ラピズラズリとしては低品質のもので、ラピダリー市場の関心を引くものではなさそうであるが、あるいは上質のものもどこかに存在しているかもしれない。引き続き耳をすませ。

(追記)下の標本を最近入手した(2011.2)。ラベルにセント・ジョー鉱山産とあるが、mindat で調べてみるとZCA#4と同じ場所だった。あるコレクターの収蔵品だったもので、彼はこの鉱山の監督者であったらしい。この産地から青金石が出るのは確実だと思う。標本を扱った標本商はこの標本の存在を以て、産出が記載されているアウインは実はラズライトだろうとmindatにコメントを寄せた。蛍光する部分は透輝石であるとしている。対して、蛍光性が方ソーダ石のそれに似ていることから、ラズライトでなくソーダライトではないかというコメントがついている。ソーダライトグループの標識はいろいろと難しい問題がありそうで、今後、整理が必要になってくるのではあるまいか。cf.No.250

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