581.青針銅鉱 Cyanotrichite (USA産) |
銅鉱床の酸化帯に見出される二次鉱物で、銅とアルミの硫酸、炭酸、水酸(水和)塩である。
実は分類にややあいまいなところがあり、青針銅鉱の原産地標本は水酸硫酸塩として定義されている一方、硫酸イオンより炭酸イオンが卓越したものが多く存在し、Carbonate-Cyanotrichite 炭酸青針銅鉱
と呼んで別種として扱われる。しかし硫酸イオンをまったく含まない炭酸塩種があるのかどうかはよく分かっていない。標本として出回っているものは、普通、炭酸青針銅鉱とされている(いちいち分析しているとはとても信じられないが)。
いずれにしてもわりと珍しい種で、
図鑑を開くと、代表的な産地にギリシャのラウリオン、フランスのカップ・ガロンヌ(緑鉛鉱などで有名)、スコットランドのリードヒル、イギリスのコーンワル、南アのナマクアランド、米国はアリゾナのグランビュー鉱山、カッパークイーン鉱山、ユタ州アメリカンイーグル鉱山、ネバダのマジューバヒル鉱山などが挙げられている。
いずれも希産二次鉱物の有名産地である。日本では静岡県下田の河津鉱山産があるが、鉱物採集の旅東海編(1977)に「日本ではここでしか見つかっていません)とある。
余談だが、画像にあるグランドビュー産の本鉱は、もともと Lettsomite と呼ばれていた。これは1850年にパーシーがイギリスの鉱物学者レッソムに献げた鉱物名だが、1839年に記載されていたシアノトリカイトと同成分であると判明したため、統合されてしまったものである。レッソムは「大英帝国の鉱物学手引き」という本を著した大家だった。アーメン。
cf.ヨアネウム5