624.トルコ石(燐灰石仮晶) Turquoise (メキシコ産)

 

 

 

Turquoise トルコ石

トルコ石(燐灰石仮晶) −メキシコ、ソノラ、バヴィアコラ産

 

トルコ石はふつう脈状〜塊状(ノジュール)で産するもので、自形結晶を示すことはマレである(⇒No.251)。また結晶してもその大きさは高々数ミリ程度にしかならない。透明度の高い巨大結晶を合成してカットしたらどんなにキレイかと思うが、ホタル石よりは硬いとしてもやはり石英より軟らかいし、ヘキ開もあるので、たぶん扱いの難しいアクセサリになってしまうだろう。

この標本は高さ約2cmのトルコ石の結晶である!
といっても六角柱状で頭部が角錐という、三斜晶系とは思えない形。そう、仮晶なのである。もともと燐灰石だったものが結晶形を保ったままトルコ石に変化したと言われている。
トルコ石は銅とアルミニウムのリン酸・水酸塩(水和物)で、燐灰石は弗化カルシウムのリン酸塩であるから、燐灰石に銅やアルミニウムを含む鉱水が作用して出来たものであろう。
もともとトルコ石は火成岩帯や、堆積岩を貫いてマグマが上昇してきた土地に産することが多いが、それはその銅成分が、マグマを起源として地表にもたらされ、一次鉱石から風化分解して溶け出した鉱水に由来するからである。この場合も同様に、銅分を含む鉱水が燐灰石に作用したものだろう。この種の標本は10年ほど前からちらほらと市場に出ている。

トルコ石にしてはかなり緑色味が優っているが、一般に北米産のトルコ石は鉄分を多く含んで、緑色や黄色味を帯びることが多い。それはこの標本が赤サビ色の褐鉄鉱を伴っていることでも分かる。

補記:砂川博士は「宝石は語る」の中で、トルコ石の産地は砂漠地帯が多いことを指摘している。砂漠気候によって岩石が風化してアルミニウムに富んだボーキサイトが出来る。これに銅鉱物からの銅や、動物の死骸などから供給される燐が加わる。これらの成分を溶かし込んだ水が多孔質の岩石を通る間に、トルコ石(の微細な結晶)が沈殿するのだと。

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