626.ファウスト石 Faustite (USA産)

 

 

Faustite ファウスト石

ファウスト石 -USA、NV、カッパー・キング鉱山産
(原産地標本)

 

ネバダ産のトルコ石には色のバリエーションが多いと書いたが(No.625)、いくつかの鉱山ではトルコ石によく似ているが鉱物学的に別種となる3種類の石が採れる。ファウスト石、チャルコシデライト(擬トルコ石)、バリッシャー石である。ファウスト石とチャルコシデライトはトルコ石グループの種であり、いわば親戚のよしみでトルコ石の名で販売されることが多い。(売り手としてはその方が都合がよいし、トルコ石と混合して出てくるために外観から厳密に種を区別するのは実際的でないという理由がある)
バリッシャー石アルミニウムの燐酸塩で、トルコ石から銅を抜いたようなものだが、これもまたトルコ石として売られることがある。多少なり良心的に(というべきか自信がないが)、バリコイス( Variquoise = Variscite + Turquoise) という名で売られることもある。硅岩化していればどう呼んでも同じだという見方も。
この石はユタ州のノジュールが有名で、こちらは堂々バリッシャー石として売られていて、最近は、かぁなぁり、高価である。

ファウスト石はネバダ州が原産で、原標本はエルコ郡マギー・クリークのカッパー・キング鉱山で採集され、1953年に記載された。珪岩中に脈状になって出る。銅より亜鉛分が優越し、一般にりんご緑色をしている。純粋なものは白色だというが、それでは宝石にならない。ファウストは当時USGS(米国地質調査所)の現役所員で、魔術師でなく地質学者だった。
擬トルコ石はアルミニウム分を鉄分が置換した種で、1814年に記載されている。その名は成分の銅と鉄による。原産地はドイツのジーゲン。やはり青味を失って緑〜黄緑色になることが多い。Dana 8th にはマヒワ(鳥)緑色〜暗緑色と記載されている。

この標本はある地質学者さんが学術サンプルとして採集したものを売っていたので手に入れたが、正直言ってそのヘンにある低品質のクリソコラ原石とほとんど変わらない気がする。硅岩化が進行しているのでなおさらそう思える。いつかビビッドなリンゴ緑色を手に入れたら差替えたい野望があります。つか、カリコレイク、欲しいよな。

 

鉱物たちの庭 ホームへ