136.バリスシア石  Variscite   (USA産)

 

 

アップルグリーンの石です。ハンバーグとは関係ないよ。

バリッシャー石−USA、ユタ州産

同じく、USA,ネバダ州、ベッツ・ポスト産

 

このなんとも格好のいい名前は、原産地であるドイツ、ボグランド(フォクトランド)の古名、バリスシアに因んでいる。
アメリカのユタ州とネバダ州では、美しい緑色の礫岩状の石が沢山採れ、研磨してアクセサリーなどに使われている。

成分はアルミニウムの燐酸塩。アルミが(3価の)鉄に置き換わったものがストレング石だ。理論上、アルミと鉄を任意の割合で含んだ中間組成の鉱物も存在しうるはずだが、自然界では、どちらかの端成分に近いものしか知られていない。イエスかノーか、剣かコーランか、片手にピストル片手に花束、とにかくどっちかでないと収まらないらしい(補記)
典型的なバリスシア石は、りんご緑色、塊状、肉眼的な結晶はまれ。ストレング石は、ピンク色で結晶していることが多い。バリスシア石の緑色は、鉄などの不純物が含まれるためとされているが、ストレング石は、その不純物が主要成分となっているのにピンク色だ(もっとも、緑もピンクも本来の色ではない)。鉄とアルミが均等に入ると、どういうことになるのか、興味津々。

なお、下の写真中、バリスシア石に囲まれて白く見える部分は、ホワイトロック石というそうだが、私はこの鉱物について、まああったく知らない。

cf. No.388     ヘオミネロ5

 

補記:かっこつけて書いたが、スウェーデンのレバニエミ鉱山産のストレング石は、バリッシャー石との中間に近い組成のものがあるそうだ(この産地ではバッリシャー石はあまり沢山は出ない)。中間組成のものは白色に近いという。これが上記の疑問の答え(のひとつ)。やれやれ。

追記:インターネットが普及したお蔭で、「知らない?なら検索しなさいよ!」という世相になった。
分からないことを分からないと言うのに気が引けるのはいい時代なのだろうか?
それはともかくホワイトロック石 Whitlockite は 組成式 Ca9Mg(PO3OH)(PO4)6 のやや変わった構造を持つ燐酸塩鉱物である。式中、陽イオン価は計+20あり、−3価の燐酸イオン6ケで18価分がバランスされているが、残り+2分の相殺に燐酸イオンは過剰で、代わりに (PO3OH)2- という変則的なイオン式が与えられている。実はウロー石も同様で、セル石と同じ構造の仕組みであるが(こちらは (SiO3OH)の変則珪酸イオンを含む)、いかにも苦しい。結晶格子に部分的に水素 H2 が入るという。原産地はニューハンプシャー州パレルモ鉱山で、1941年に報告された。アメリカ自然史博物館のキュレーター H.P.ホワイトロック氏に因む。

パレルモ(#1)鉱山は燐酸に富むペグマタイトで、工業用の雲母、長石、ベリル等を掘った。1860年代から1940年代にかけて断続的に稼働した。その後1970年代には希産燐酸塩鉱物の標本を採るためだけに稼動された。ホワイトロック石はふつう1cm以下の自形結晶を産したが、まれに3cm大に達するものがあったという。
ちなみにサウスダコタ州のチップ・トップ鉱山(cf. No.138)も 1980年代初に本鉱の晶脈状標本を多産した。またカナダ、ユーコンのビッグフィッシュ/ラピッドクリークでは 2002年頃に美晶が採れた。希産種。(2019.5.5)

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