675.セーレンセン石 Sorensenite (グリーンランド産)

 

 

Sorensenite セーレンセン石

Sorensenite セーレンセン石

ソーレンセン石 (下段 長波紫外線による蛍光) -グリーンランド、イリマウスサーク産

 

セーレンセン(ソーレンセン/ゼーレンゼン)石は、ナトリウム、スズ、ベリリウムのケイ酸塩鉱物で、今のところ、グリーンランドのイリマウスサークでのみ見つかっている希産種である。イリマウスサークを代表する鉱物のひとつだが、この地方でも産出するエリアは限られている(ただしあるところには大量にあるらしい)。
Dana 8th を繙くと原産地としてナカラック(Nakalaq)が示されている。ソ連の E.I. セミョーノフは 1964年にこの地の北斜面で本鉱を見つけた。新鉱物の可能性を察知した彼はモスクワに戻るとすぐに標本を調べてその確証を得た。ところが実は同じ外観の石が1962年にクバネフィヨルド(Kvanefjeld)で採集されており、コペンハーゲンに標本が保管されていた。調べてみるとやはり同じ組成の鉱物であった。セミョーノフが本鉱をコペンハーゲン大の地質学者ヘニング・セーレンセンに献名したのは、そのあたりの経緯に配慮したものだろう(1965年記載)。彼はそもそもデンマークの鉱物学者らの要望を受けてグリーンランドの鉱物産地を訪れていたのだ。

セーレンセン石は単斜晶系で、方沸石に富んだ岩体に産して細長い板状に結晶する。集塊をなすのが普通だが、方沸石と混じって成長したものはときに巨大なサイズになる。まれに複雑な3連双晶をなす。へき開は2方向に発達する。
No.674で紹介した業者さんによると、セーレンセン石を多産するエリアには家ほどもある大きさの転石が散らばっていて、その表面に塊状のセーレンセン石が成長している。転石は固く、タガネを打ち込む隙もないほど緻密であるから、大きな標本を無傷で取り出すことは至難の業である。そのため一般にサムネイルサイズの標本ばかりが出回っているのだが、といいつつ、彼ら自身はある年、ドリルや破砕機(その前にはガス式のノコ)を持ち込んで採集を試み、いくつかの比較的大きな良標本の採集に成功したんだそうな。
紫外線(SW)で美しいタマゴ色〜白色に蛍光し、LWでは黄色みが増す。

余談だが Princeton field guide の鉱物図鑑 Minerals of the world (Ole Johnsen著 2002)に掲載されている標本の大半は(5点の私蔵品を除き)コペンハーゲン大地質博物館のコレクションである。セーレンセン石はじめ、グリーンランド産鉱物の充実ぶりにはひたすら脱帽するばかり。

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