9.ローレンツェン石  Lorenzenite   (ロシア産)

 

 

Lorenzenite from Mount Flora

ローレンツェンナイト −ロシア、コラ半島、ロボゼロ、フローラ山産

 

 

ソビエト連邦がなくなって、もう10余年になるなんて、実に不思議な気がする。連邦の崩壊は全世界の社会主義国家の経済施策、外交政策に決定的な影響を与えた。とはいうものの、私なんかが一番実感するのは、冷戦終結以来、まことに驚異的なロシア産の鉱物標本が市場にあふれるようになったということなのである。

この鉱物は、褐色不透明で、一見無愛想に見えるのに、短波紫外線を照てると、緑がかった黄色に蛍光するという裏技をもっている。まさかコレが!?、といった意外さがある。
実は写真の標本は「ラムゼイアイト」(訳せばラムゼイ氏鉱)というラベルがついていたのを購入したのだが、なんとなく手持のローレンゼン石の標本にそっくりだったので、帰宅後比べてみると、蛍光するところまで一緒だった。辞典を見ると、同じ鉱物種であった。うにゃ〜。(1999.3)


追記:マウント・フローラ産の標本が米国市場に現れたのは、ロシアが崩壊する数年前の1980年代初から半ば頃であったらしい。暗色のエジリンを多く含む母岩に2.5cmサイズの焦茶色の頭部付板状結晶が載っていた。そして冷戦が終わる頃から、本鉱としては疑いなく世界一といえる標本群が西側市場にもたらされた。ローレンツェン石はロボゼロでは普遍的にみられる造岩鉱物としてあるが、良品はやはりマウント・フローラに限るようだ。針状、繊維状、柱状の結晶もみられる。1980年頃、白色の曹長石に伴うコントラストの素晴らしい標本が出たが、博物館で見ただけ。 Ramsayite は旧名に属し、今日では廃されている。(2016.12)

cf. No.679 サフィリンNo.680 コーネルピン (ローレンゼンが研究した鉱物)

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