680.コーネルピン Kornerupine (ケニア産)

 

 

コルネルップ石−ケニア産
(撮影側偏光フィルターによる色の違い)

 

コーネルピンはグリーンランドのフィスケナエスセットが原産の鉱物である。ここはサフィリンの原産地でもあるが、両者はマグネシウム−アルミニウムリッチな変成岩中に相伴って産する(ほかに菫青石も伴う)。
ギーゼッケはこの地のサフィリンに気づいたが、コーネルピンについてはどうだったのか、確かなことは分からない。本鉱を最初に研究したのはロレンゼンで、彼はこれを新鉱物と認めて、1884年、デンマークの地質学者A.N.コルネルプ(1857-1881)に因んで命名した。詳細な結晶学的・光学的特性は1899年にウシンが決定した。(cf. No.740 プリスマティン

No.675 にコペンハーゲン大学地質博物館のコレクションに拠った図鑑、Minerals of the world (Ole Johnsen著 2002)を紹介したが、この本にはサフィリンとコーネルピンの原産地標本が載っている。前者は塊状で藍色に近い暗青色のもの、後者は変成岩の基岩中に透輝石を想わせる暗緑色(半透明)の柱状結晶が埋もれたものである。
ギーゼッケがサフィリンを藍晶石、またエメラルド(緑柱石)と記したことは No.679 に述べたが、エメラルドと見たものの中にはあるいは柱状のコーネルピンもあったかもしれない。もちろん根拠のない推測ではある。
いずれにせよ、ロレンゼンの記載はフィスケナエスセットの南の入り江でステーンストロップが採集した標本に拠ったとされており、ギーゼッケの採集品は無関係のようである。
実はコペンハーゲンの地質博物館には原標本が保管されていないのだが、ステーンストロップが1877年に採集し、1883年にコーネルピンと記名された標本が4ケある。記名者はロレンゼンであろうという。 
グリーンランド産コーネルピンの標本は 1970年代まで、この4ケとウシンが調べた数点が知られるのみだった。
しかし60年代後半から70年代にかけて行われたフィスケナエスセット地域の地質分布調査によって、サフィリンを産する地域40ケ所、コーネルピンの産地6ケ所が明らかにされ、標本の入手も超困難というわけではなくなった。またその後、褐色味を帯びない緑色半透明の美しい結晶標本が(再?)発見されて、宝石愛好家のコレクションに収まっているらしい。

宝石としてのコーネルピンはむしろマダガスカルやスリランカ(の漂砂鉱床中)に産するものが有名で、透明度の高い結晶が潤沢に出ている。近山大事典には、和名コルネルプ石、三色性(強)、緑色:黄色:赤褐色。蛍光性はミャンマー産及び東アフリカ産が長波・短波ともに黄色蛍光、スリランカ産は変化なし、とある。スリランカ、ミャンマー産にはキャッツアイタイプもあるそうだ。

近年はケニアからたいへん美しいカケラ状の標本がわりと安価に出回っている。上の画像がそれで、多色性を示す(光学異方性を示す)鉱物らしく、偏光フィルターを回すと色味が紫〜青〜緑と変化して驚かされる(私は撮影したとき初めて気づいてのけぞった)。短波紫外線で黄色に蛍光する。

コーネルピンの組成式はヤンセンの図鑑に Mg4Al6(Si,Al,B)5O21(OH) とある。ホウ素を含む希産鉱物である。硬度6.5〜7。比重3.3。斜方晶系。へき開2方向に完全。

cf. ヨアネウムの標本(原産地)

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