8.イネス石 Inesite (南アフリカ産) |
イネス石というと、桃色の角柱状の結晶、あるいは放射繊維状の結晶質の塊だと思っていたけれど、中にはこの写真のようにほんとうに赤い針状結晶が放射状に集まって球になった標本がある。南アフリカにはときどき、世界中どこにもないような変わった産状の鉱物が現われる、というのは私の個人的な感想。例えばアホー石やパパゴ石入りの水晶、紫色の杉石、ポルダーバート石、数センチサイズのエトリング石(スツルマン石)…。それがアフリカ? (1999.3)
追記:No.255に述べたがカラハリ砂漠のマンガン地帯は1950年代半ばに開発が始まった。ウェッセルズ鉱山産の各種鉱物は70年代半ば頃から市場に出回るようになった。
イネス石では 1cmサイズの桃色針状結晶で、ダトー石やペクトライトなどを伴うものが知られた。画像のような濃紅色のぶどう状(球状)標本は、少し遅れて
90年代初〜半ばにかけて出回った。たいてい2cm大の球で、ソーマス石やゾノトラ石を伴うものもあった。1992年の春に見つかった晶洞からはこの種のイネス石として最良のもの(6cm大)が採れ、続く数年間がこのタイプの収穫期であったようだ。上の画像も当時出回ったもののひとつ。
その後は薄い刃板状結晶が扇状に展開したタイプが主流で、魚眼石やソーダ沸石などを伴って産している。(2016.12)
cf. No.612 イネス石