56.ツグツープ石  Tugtupite   (デンマーク産)

 

 

タグタップ石 とその蛍光 −グリーンランド、イルモサック産

 

かすみ石閃長岩という白い岩の中に赤く見える部分が、ツグツープ石。グリーンランドのツグツープ岬(となかい岬)というところで、最初に発見された。タグツパイト、ツグツパイト、タグトゥパイトと発音する人もいる。和名ではベリリウム方曹達石という表記を見たことがある。これはもともとロシア産の石に与えられた名前で、ベリリウムを含むソーダライトの仲間であることを表している。(補記)
地元のイヌイットはこの石を Tuttupit と呼び慣わすそうで、「となかいの血」の意味である。私としてはとなかい石と呼びたい。
紫外線を照てると、非常に明るい赤に輝く。それがとても美しいので、おすすめ鉱物のひとつです。(No.246No.682も参照)

ツグツープ石やNo.73のハックマン石には、紫外線(ときに日光)を当てると赤色が濃くなるものがあるが、ときに掌の中にしっかり握っていると淡い赤色が急に美しい濃赤色に変わることがあるという。そのせいだろうか、地元の若い恋人たちは互いにこの石を贈りあうらしい。言い伝えによると、愛し合う心が通じたとき、この石が炎のように赤く染まるのだとか。

cf. グリーンランド西部の地元民(グリーンランダー)の言葉で Tugto はトナカイの意であることをハンス・エゲデは記録している(18世紀前半)。北西部には Tugto 氷河と呼ばれる場所があり、日本ではタグト氷河と訳されている。するとやはりタグタップ石、ないしタッタップ石でいいのかもしれない。

補記:発見以来、長く方ソーダ石の亜種として知られていたが、現在はベリリウム珪酸塩としてヘルビン・グループに分類される独立種とされている。(2019.10.8)

鉱物たちの庭 ホームへ