688.ステーンストロップ石 Steenstrupine-(Ce) (ロシア産)

 

 

ステーンストロップ石(褐色)、ウシン石(ライラック色) 
-ロシア、コラ半島、ロボゼロ、ウンボゼロ鉱山、Shkatulka pegmatite産

ステーンストロップ石の結晶 −グリーンランド、イリマウサーク、タセック・スロープ

 

No.681に簡単に触れたが、ステーンストロップ石はコペンハーゲンの地質学者クヌート・ヨハネス・ステーンストロップ(ステーンストルプ)(1842-1906)がイリマウサークで採集した標本をロレンゼンらが研究し、1881年に記載した種である。
セリウム、ジルコニウム、トリウムなどの希元素を含み、組成式は Na14Ce6Mn2+Mn3+Fe3+2(Zr,Th)(OH)2(PO4)7(Si6O18)2・3H2O。
見るからに複雑な構造を思わせるが、実際、結晶構造の決定には記載後も長い時間がかかったという。単位セルのサイズがもっとも大きい鉱物のひとつと目される。
放射性元素のトリウムを含むことから、通常その結晶構造は局部的に、または全体的にメタミクト化している。不透明な茶褐色の見かけがいかにも放射性鉱物らしいのであるが、グリーランド産の標本には見事な双晶を示すものがあって人気が高い。画像はロボゼロ産の標本で、あいにくと結晶面は欠けているが、まあ、私が手が出せるのはこのレベル。(※ 後にグリーンランド産も入手したので画像追加した。)

ステーンストロップは1863年に薬学で学位を取った後、 1866年から1889年までの24年間をコペンハーゲン大学の地質博物館で補佐係として勤め上げた人物である。その間、都合9回にわたってグリーンランドを訪れ、北西部における中新世植物化石の優れたコレクションをなした。彼の名を一躍有名にしたのは、A.E.ノルデンシェルトがディスコ島で発見し、隕鉄であると判断した鉄分に富む巨大な塊が、実際には玄武岩中の自然鉄噴出物だと証明したことである。彼は1871年に現地を訪れ、その後何度も足を運んで綿密な調査を続けたのだ。この業績によってイギリス鉱物学会の名誉会員に推され、また 1889年から晩年までデンマーク地質調査局の常任地質学者として務めることとなった。

母岩のライラック色の部分は Ussingite ウシン石。組成 Na2[AlSi3O8](OH)。 コペンハーゲン大の鉱物学教授を務めたニールス・ヴィゴ・ウシン(1864-1911)がイリマウサークのカンゲルルアルスアクで採集した標本から見出され、1915年にベーギルドが記載した種である。多色性があり、溶融しやすい。かすみ石閃長岩中に産し、珪酸塩鉱物らしく酸によりゼラチン化する。
カナダのモンサンチラールには美結晶が出るという。ここでは方ソーダ石のゼノリス中に塊状になって含まれる産状も知られているが、この種の標本に紫外線を当てると、方ソーダ石の部分は蛍光し、ウシン石の部分は蛍光しない。

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