737.オーリキュプライド Auricupride (ロシア産)

 

 

オーリキュプライド -ロシア、ウラル、カラパッシュ産

 

金はたいてい単体で、または銀や微量の銅を含んだ(エレクトラムと通称される)ある種の合金の形で見出されることが多いが、時に金-テルル鉱脈においてテルル化物として大量に産することもある(cf.No.729)。 またテルルと同族元素のセレンや硫黄と結びついたセレン化物、硫化物もないではない。そして稀には元素鉱物として、ほかの金属元素と結びついたものがある。
オーリキュプライドはそのひとつで、Cu3Auの組成を持つ、銅(キュープラム)と金(アウルム)の自然合金である。

画像は原産地の標本。ウラル山脈南部のこの一帯は18世紀前半にデミドフ家が鉱山開発を行った地域で、1822年にサク・エルガ川に砂金の大きな(漂砂)鉱床が見つかって金洗いの人々が集まったのが、カラバッシュの町(チェリャビンスクの北西約90キロ)の始まりだった。ほどなく近くのソイマノフスキーで銅が掘り出され、 1837年には銅精錬施設がおかれた。しかしカラバッシュは長い間、むしろ産金地として知られた。20世紀前半(1902-1946)にはゾロタヤ(金)・ガラ(山)と呼ばれた蛇紋岩の山で初生鉱床型の金が採掘されたが、これは多量の銅を含んだ特異な山金だった。そんな金を調べた結果、1950年に記載されたのが本鉱である。
銅と金の比率はさまざまなものがあり、より金分の高い Cuproauride と呼ばれるもの(CuAu - CuAu3) も定義されているが、鉱物種としては承認されていない。組成式 CuAu の Tetraauricupride は新疆ウイグルを原産地として 1982年に記載された類縁鉱物で、その後ゾロタヤ・ガラでも報告されている。

cf. ロシア帝国の成立とウラル鉱工業の始まり 補記1

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