757.トパーズ Topaz  (USA産)

 

 

Topaz

淡青色のトパーズ -USA、NV、ホーソーン、ザポット産

 

黄色やピンク、オレンジ系のトパーズは、微量含まれるクロム(3価または4価イオン)が安定的な発色要因として主に関与し(特定スペクトルの吸収バンドを可視波長域の複数ケ所に生じる)、ときにバナジウム(4価イオン)等の金属元素も寄与するとみられるが、さらに自然放射線を受けて生じた不安定なカラーセンターの色味が加わることが多いようである。
放射線励起性のカラーセンターは、加熱処理や太陽光への長期間曝露によってキャンセルされる傾向があるのだが、そうするとその色味は減算されて、金属元素による安定発色のみが現れる。
ブラジル産のインペリアルトパーズを加熱するとオレンジ色から(クロムによる)ピンク色に変化するのはこの種の現象と考えられている。

自然放射線による着色の仕組みは必ずしも明確でないが、淡褐色〜褐色あるいは淡青色(2価の鉄イオンが寄与するとの説もあるが)を呈することが多いようである。というのは、無色のトパーズに人為的にγ線等の電磁放射線を照射すると、たいてい褐色から灰色を呈することが知られており、さらに200℃程度に緩やかに加熱すると茶系・灰系のくすみが消えて淡青色に変化する場合のあることが知られているからだ。
あるいは晶出時に生じる自然な結晶欠陥がそのままカラーセンターとして機能することがあるかもしれないし、またある種の欠陥のみが自然放射線を受けてカラーセンター化するのかもしれない。ただ、いずれにしてもトパーズの天然の淡褐色〜淡青色は、日光や熱、電磁放射線などの刺激に対してあまり安定的とはいえない。

一方、無色のトパーズに強烈な粒子放射線を照射することで、天然よりずっと濃い青色を発現させる技術が知られている。この種の処理トパーズは 1970年代から宝石(貴石)市場に登場し、今日では大量に供給されているため、その価格はほとんど二束三文的となっている。
青色トパーズは当初、電磁放射線(γ線)照射によって作られると一般に信じられていたが、実際は電子線(β線)の寄与が本質であった。電子線は必ずしも透過性が強くないため、着色処理は原石でなくファセットカットを施したルースに対して行われ、また高線量曝射によってルースが相当な高温に達するため、適切な熱管理プロセスも求められる。この技術は80年代末には公知となった。

また80年代初には中性子線照射でさらに濃い青色「ロンドン・ブルー」を発現させたトパーズも市場に現れていた。中性子線はβ線に比べてルースの深部まで届くため、より濃い青色が出ると考えられている。中性子照射を経たトパーズは放射化して自ら強い放射能を帯びる。そのため半減期の短い(放射能の高い)同位元素の減衰(壊変)を待つために、市場に出す前に最低数ケ月の寝かせ期間がおかれる(おかれなければならない)。
粒子線による発色原理もまた必ずしも分明でないが、これらの人工処理を施した青色トパーズは日光にあてた程度では褪色しない。天然とはもうまったく別の結晶状態ないしエネルギー準位(いわば焼き付き状態)になっているのであろう。
個人的には、処理トパーズがパワーストーン的にどのような肯定的性格を発現するべく変化しているのか、たいへん興味がある。

 

補記:産地のザポット zapot はホーソーンから北東に約25キロのジリス峡谷にあるペグマタイト鉱山で、トパーズ、煙水晶、微斜長石(アマゾナイト)の美晶を産することで知られる。産地名はトパーズ topaz を逆綴りにしたもの。
1986年にハーヴェイ・ゴードンが露頭の採掘権を買い取って標本採集を始め、1991年夏にボナンザを見つけたという。1999年10月28日に「トリック・オア・トリート」(※ハロウィーンの合言葉)晶洞が発見され、米国産として最上のトパーズと評された一群の青色系宝石質の巨晶が得られた。最大の3ケはそれぞれ指し渡し 24cm, 21cm, 15cm という。(2021.8.15)

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