791.アダム鉱3 Adamite (メキシコ産)

 

 

Cuprian Adamite

Cuprian Adamite

Cuprian Adamite

含銅アダム鉱 −メキシコ、デュランゴ、マピミ、オハエラ鉱山産

 

金属の初生鉱床に気候環境(大気・雨水・寒暖など)が作用して二次鉱物が生成され、金属元素の再濃集(浅成富化作用)が起こった部位を二次富鉱帯という。もとの鉱床の上部(地表付近)に起こるので上部酸化帯とも呼ばれる。
地表からどの程度の深さまでこうした変化が起こるかはまさに環境次第であって、断層や亀裂が発達して雨水が地下深くまで侵入するような土地では、酸化帯も相当な深度まで進行していることがある。

オハエラ鉱山はスカルン鉱床で、石灰岩や苦灰岩などの炭酸性の岩石に金・銀・銅・亜鉛・鉛などの金属を含む熱水が接触して、交代作用によって(硫化)金属鉱脈が生成された。鉱脈は貫入岩体の周囲に輪帯状の鉱種分布を伴って生じていることが多く、その厚みは1キロ以上に及ぶ。水平に拡がる鉱脈はマントス(毛布、マントル)と呼ばれ、垂直に(または高傾斜度で)延びる鉱脈はチムニー(煙突を二つに割ったように、岩壁を縦に走る裂目)と呼ばれる。鉱床に雨水が侵入すると硫化鉱物は侵食され、酸化を受けて多彩な二次鉱物に変化する。その時20%程度の体積減少が起こるため、空隙の多いガサガサした土壌性の地質が生じたり、あるいは大規模な空洞が生じる。こうした箇所で二次鉱物は自由成長し、鉱物愛好家を唸らせる結晶が見い出されるのである。
マントスに生じる空洞は水平に拡がりやすく、チムニーにおいては垂直に伸びやすい。奈落を思わせる深い大空洞はチムニーに特有のものである。オハエラにはキリスト教の聖人の名が与えられた多数のチムニーが(そして縦に長い空洞が)発達している。その空洞を伝って鉱夫は地下の深みへ降りてゆく。

スペイン征服時代に最初に発見された鉱脈は、「ボカ・ミナ(=鉱山の口)(またはオハエラ・ビエホ=オハエラ旧坑)の名で知られた巨大な垂直チムニーで、(含臭素)塩化銀鉱を含む二次富鉱帯が地下 500mに達していた。 300年以上にわたって掘り継がれ、20世紀に入る頃には坑道は深度 650m に至った。鉱石を取り出した空洞が今日なお残っている。
アダム鉱を輩出するラ・パロマ脈や、サン・フーダス・チムニーでは酸化帯は(少なくとも)地下 700mに達している。後者のチムニーの地下 600mの地点では 1981年に紫色のアダム鉱が出たが、そこは塩化銀鉱の富鉱帯で、約 900kg のリッチな銀鉱が採集された。
オハエラのアダム鉱の標本は一般に褐鉄鉱を母岩とするものが多いが、この母岩自体、大規模な風化によって二次的に生じたもので、アダム鉱の球果はその空隙を胎として育った。

画像は銅分を含んで青色〜緑色を帯びたアダム鉱。このタイプの(淡色の)標本は1946年の昔から知られているが、濃青色の標本が大量に採集されたのは 1988年頃が初めてだったという。大きな晶洞が相次いで発見され、センチサイズの結晶標本が市場に流れた。サン・ホアン・ポニエンテ、ナンバー9、サン・フーディタス等の鉱脈がこのタイプのポケットとして挙げられる。最近の大きな発見は 2008年初にサン・ホアン・ポニエンテで採集されたリンゴ緑色の結晶標本だろう。大きな単結晶は1cmをこえる。

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