818.ヴェイリネナイト Vayrynenite (パキスタン産ほか)

 

 

vayrynenite

ヴェイリネナイト -フィンランド、オリベシ、エレヤルビ、ヴィタニエミ産
Vayrynenite
ヴェイリネン石 -パキスタン、スカルドゥ、シェンガス・ハラモシュ山地産

 

ヴェイリネン石(バイリネン石)は組成 Mn2+Be[(OH,F)|(PO4)]、(水酸)ヘルデル石のカルシウム分をマンガンに置換したものにあたる。たいてい粒状〜塊状で産し、自形結晶をなすことは稀である。硬度5。脆く、明瞭なへき開性を示す。フィンランドのタンペレに近いヴィタニエミのペグマタイトで 1939年頃に発見され、未知の鉱物ではないかと考えられていたそうだが、記載されたのは 15年後の 1954年だった。ヘルシンキにある工科高校の鉱物学者ヘイキ・アラン・ヴェイリネン(1888-1956)に献名された。ヘルデル石やベリロナイト、微斜長石、白雲母などを伴って産した。

淡いピンク色の数ミリ大の原産地標本はいかにも燐酸塩鉱物らしく、控えめで可憐なところに好感が持てる感じだが、近年は濃いバラ色〜パパラチア色(オレンジがかったピンク色)をした2,3センチ大の自形結晶が出回っていて仰天させられる。
これらはたいていパキスタン-アフガニスタン産である。 1990年代中頃に両国の国境付近、チットラル峡谷北方のブログール・パスあたりで採れたという触れ込みで、美麗な分離結晶がちらほら出ていた。2000年頃にはアフガニスタンのパプロック鉱区、パキスタンのギルギットないしスカルドゥ地方産としてそれなりの数の標本が出回るようになって、MR誌などにも取り上げられて人気を得たが、後にチルドレン石だったという話も出たりして、なによりオソロしい高値で取引されていたので、指をくわえてみているほかないのであった。

それから年々新たに、より品質の優れた標本が出てきたのは、おそらくアメリカ市場で引く手あまただったことを反映していると思われるが、ともかくギルギット地方サシーやスカルドゥ地方シェンガスのペグマタイトに出る宝石質の柱状〜刃状結晶は、ある種のブランドと化した観があった。濃いバラ色は原産地やその他の産地(ポルトガル、スペイン、カザフスタンなど、スウェーデンには20cmに及ぶ塊状集合が産するというが)にはないもので、さらにシェンガスの東65キロのダッスー村近くに出たというある標本は当時世界一の呼び声が掛かった。ベイルートの Mim 博物館にあるはずだ。
本当の産地は未だ隠されているとみられるが、スカルドゥ地方ブレルドゥ川流域の谷間、おそらくはナムルック鉱山の燐酸塩ペグマタイト(1990年代中頃にあっと驚く宝石質のトルプル石結晶を出したところ)、あるいは同じ谷のアパリガムの村近くがアヤしいと言われている。
伝説的というか、ウワサがウワサを呼ぶ状態がはや20年ばかり続いており、最近(2015年)もこの川沿いのニイェット村近くで採れたという結晶が何十点か、ツーソンショーに出たニュースがあった。
今後もっといいモノが出てきそうでもあるし、値段もこなれていきそうな感じもあるし、まだ腹を括っていないコレクターは入手時期に非常に迷うでありましょう。

画像の標本はスカルドゥ産という。実物の色は画像よりやや濃くて彩度が高いが、写真ではうまく表現できない。未分析だが母岩は水酸ヘルデル石だろうという。拡大画像の結晶は縦の長さ8ミリ。私に手が届くのはこのくらいまで。

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