1010.水晶(複合形4)  Quartz Aggrigate (中国産ほか)

 

 

紫水晶 正面の単晶に別の小さな両錐結晶が癒着したもの
−メキシコ、ベラクルス、ラス・ビガス、ピエドラ・パラダ産

セプター状水晶の複合形 −中国、貴州省産

水晶 分枝形 −中国、雲南省産

 

No.1009にラス・ビガス産の銘柄アメシスト(の双晶形)を紹介した。この産地は柱状の単晶がさまざまな形に交差した美麗群晶の宝庫として知られ、意味あり気に見える形状が多数見つかる(というか、そんなつもりで見るとどれも意味あり気に見える)。Mindatを参照すると、日本式双晶らしき画像も投稿されている。
このページの一番上の画像は No.1009と同じ標本の別の部位で、正面の単晶(A)の柱面に別の両錐形の単晶(B)がくっついている。柱軸の交差角は約 85度(95度)だが、Aの柱面に向かい合うのはBの柱面でなく柱面間の稜なので、日本式双晶ではない。しかし、どういう機構で癒着しうるのかと考え出すと、やはり結晶構造的に馴染やすい(定着・残存しやすい)幾何配置があるのではないかと思われる。

二番目の標本は貴州省産として入手した複合形のセプター水晶。No.1005No.1006で紹介した雲南省産に似ており、あるいは同じ産地かと疑う。水晶の平行連晶は、柱軸に平行に(すだれ状に)連なる形状と、同じ柱軸上を伸びて(串刺し状に)連なる形状とが代表的だが、この例(二番目の画像)はどちらとも含んでいる。
次の三番目の画像は少し手前に起こしたアングルで、傾軸的に交差する別の単晶が接合した様子が分かるだろう。挟角は約43度。但し画像に見える正面の柱面同士は平行でなく、上側の単晶の上部錐面が手前に約12度起き上がった配置。偶然なのか、結晶学的に有利な接合形なのか判断が難しいが、接触境界に隙間があって土状の物質を噛んでいるので、少なくともある時期以降に生じた部分は各々独立的に成長して肥大し(柱面が太り)、干渉しあうに至ったと思しい。成長の初めと思われる根本部分は黒色のインクルージョンを多量に含んでおり、ために構造の歪みや双晶的な癒着を促したのかもしれない。

その下、三番目の標本は雲南省産の複合形。よく整った両錐形の単晶をベースに、3つの小さな単晶形が突き出している。一つは同じ柱軸上を伸びる平行形、ほか二つは傾斜して貫入する形。ベース錐面上の傾軸小晶はその下部錐面がベースに埋もれた形、ベース柱面上の傾軸小晶も隠れている柱面や錐面がベースに埋もれた形が認められる。双晶として成長したのでなく、偶然捕獲されたのだ、と結論したくなるが、それにしては妙に整った形である。(接合面の縁が発達しない−結晶表面に出ていない−双晶起源の複合形とはいえるかも。)
造化の妙、と言いたい一方、何らかの規則性・法則性を見出したい気持ちが湧く。
平行に連なるものは常に結晶構造的に有意な接合で、傾軸的に連なるものはほとんどの場合偶発的な接合、と観るのは合理でない。 (No.1011に続く)

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