1011.水晶(複合形5) Quartz Aggrigate (パキスタン産)

 

 

縦に伸びるベースの柱状結晶を幹として
樹枝のように左右に分かれる小さな結晶が連なる。
上の枝の傾軸角は約84度、
中の枝は約60度(120度)、
下の枝は約73度。
いずれも一対の柱面がベースの柱面に対して
約12度で旋回している。

上の枝晶の下側で、幹晶は凹部
(凹入角約120度と思しい)を持っている

幹晶の正面の柱部に平行連晶形がみえる。
完全に平行というわけでなく、
数度の傾きは許容範囲のように思われる。
水晶 傾軸的な複合形 −パキスタン産

 

No.1010の 3番目の標本について書きながら、私の念頭にあったもう一つの標本がこれ。先の標本の枝にあたる単晶(枝晶)は、幹にあたるベースの単晶(幹晶)に潜り込むような、貫入的な境界面を示していた。一方こちらは潜り込みがなく、接合面がどこにあるか分からない複合形である。
今、幹晶と枝晶とが接合する幾何学的配置を、下図のように「傾軸角」と「回転角」とで代表させると、一番上の画像に見える、一番上の枝晶は傾軸角が約84-85度、真ん中あたりの枝晶は約60度(120度)、下側の枝晶は約72-73度である。こうして並べると約12度程度の差を持ってプレファランスな傾軸角が存在するように思われる。(とすると、48度、36度といった角度を持つ枝晶も出現しそうだ。)

 

一方、回転角をみると、いずれも約11-12度の旋回となっている。
実際にはもう一つ、幹晶柱軸回りの回転位置(あるいは柱面に対する横方向への倒れ角)もパラメータとなるのだが、この標本では3つの枝晶が同じ程度の(10-12度前後の)倒れ角を持っているようだ。
こうした観察を重ねていくと、出現頻度の高い接合角度(の組み合わせ)が統計的に見出せるだろうと思う。
先般、パリ自然史博物館のV字形巨晶を紹介したが、この標本も同様の法則性を持って接合した形と思われる(傾軸角約72度、回転角約12度)。

このページの標本は、以上の傾軸的枝晶のほかに、柱面に平行な平行連晶形が現れている。これらは厳密に幹晶に平行という訳でなく、数度程度の傾きを持つことが許されるようだ。よく観察すると幹晶自体が根本から先端(錐面)に向かって幾分反った形になっている。水晶は時に、偏差を積み重ねて成長するものらしい。マクロモザイク構造に関係するのかもしれない。

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